学部・研究科・附属病院の歴史
学部・研究科・附属病院の歴史
筆者は2011年に名古屋市立大学に着任しました。それ以後、人文社会学部心理教育学科(当時は人間科学科)の末席で保育者(幼稚園教諭・保育士資格)養成に携わってきています。広島大学大学院で幼児教育を学び、私立短期大学、私立四年制大学と籍を置いてきました。同時期に、日本保育士養成協議会の専門委員としての経験から、日本の保育者養成において、本学の立ち位置が何となくつかめるようになりました。
2020年4月現在、保育士養成協議会の会員校は541校。愛知県では36校あります。この名簿の愛知県の1番目に名市大が位置しております。この名簿は養成協議会への加入順ですから、愛知県では、古くから養成を行っている大学のひとつであると言えます。しかしながら、養成数で比べると、本学は60名と少なく(ただしこれは学科としての定員なので現実はもっと少ない)、私立大、短大とは比較になりません。
一方で、専門職養成としての保育者養成を考えると、他の職種(医師、看護師、栄養士など)と比べて、国公立大学から専門学校まで多くの養成施設があることも特徴といえます。このような中で、公立大学としての名古屋市立大学で、どのような保育者を養成すべきか。これが筆者の着任後から与えられた大きな課題であったように思います。
本学科の多くの先生の力を借りながら、いま、本学で心掛けている保育者養成としては、次の3点があげられます。
第一に、名古屋市を中心とした東海圏の保育の質向上を支える中心としての保育者となることが挙げられます。量的な育成では、他大学と比するまでもありませんが、本学科では、幅広い教養と教育学に関する知見を踏まえた上で、保育者としての専門性を高めていくように教育課程を編成しました。特に、看護学部との連携のもと、医療が強い保育者養成を特徴としたカリキュラムが2019年度より始まりました。このようなカリキュラムを通して、保育者になった後、それぞれの園で保育の質を高められる専門性の高い保育者養成を行っています。
第二に、保育者として活躍後、大学院での学びを通して専門職養成者となることです。どの専門職にも言えますが、就労後も学び続けることで専門性が担保されます。その学びの場所として、学部から大学院前期、後期と深く保育学について研究できる体制を整えています。
第三に、総合大学としての強みを生かし「すべての子ども」を支えられる人材となることです。人文社会学部では、教育課程の根幹として、ESD(持続可能な開発のための教育)を掲げています。このような理念に基づき、2018年度の教育課程から、看護学部と連携し、医療・看護の知識技術も兼ね備えた保育者養成を進めています。医療的ケア児や日本語を母国語としない幼児など、多様性の高い社会の中で、子どもを支援できる保育者養成を行っています。
筆者が名市大に着任してからの10年は、ちょうど世界的にも幼児期の教育の重要性が再確認された時期でした。これからの10年、20年に向けて、心理教育学科として、さらに保育者養成の質を高めていきたいと考えています。
人間文化研究科教授
上田 敏丈