自死遺族に対する偏見とその低減に関する研究
担当者 | 山中亮:人間文化研究科(心理教育学科)、教授、(専門分野)臨床心理学 |
2006年に公布された自殺対策基本法の第一条には,「...自殺対策を総合的に推進して,自殺の防止を図り,あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り,もって国民が健康で生きがいをもって暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする」とされています。なぜあえて,自死遺族の支援の充実を図るということが強調されているのでしょうか?これは,そもそも自死遺族が社会的な圧力を受けやすい状況にあるという前提があると考えられます。こうした圧力を受けることによって自死遺族は大切な家族を失った苦痛だけでなく,社会的にも経済的にも,そして心理的にも困難を感じやすくなるのではないかと考えられます。
しかし元来日本は自殺に寛容な国だという指摘もあります。もしそうならば,自死遺族に対しても寛容であり,周囲の人々は遺族に対して偏見を向けたり,非難したりということはないかもしれません。果たして本当にそうでしょうか?こうした疑問を持って,心理学の視点から大学生を対象にいくつかの実証研究を行いました。その結果,他の死因(がんなど)で家族を亡くした遺族に比べて,自死遺族をより精神的に混乱し,死に対して責任を負っている人であるとみなし,接触する際には緊張を感じたり,好意を持てなかったり,共感しづらい対象であるとみなしていることが示されました。
こうした結果からも,日本においても自殺及び自死遺族への偏見が存在しており,自死遺族が生きづらい社会になっていることが推測できます。
今後はこうした偏見解消に向けた効果的な心理教育プログラムの開発などを行っていきたいと考えています。