人文社会学部ESDの取り組みに関するFD研修(2022年度後期)の報告
人文社会学部ESDの取り組みに関するFD研修(2022年度後期)の報告
文責:馬渡玲欧
日時 2023年1月31日(火)16:30から18:00まで
場所 オンライン(Zoom)
参加者 人文社会学部教員22名(参加率50%)、他部局4名
目的 障害を抱える学生に対する合理的配慮の基礎知識と実践について学び、議論する。
内容 16:30-17:15 趣旨説明・石島先生による講演
17:15-18:00 質疑応答
はじめに
後期に実施したFD研修では、石島健太郎先生(東京都立大学人文社会学部人間社会学科社会福祉学教室准教授)に「合理的配慮の基礎知識と実践上の課題」と題して報告をいただいた。石島先生は福祉社会学、障害学を専門としている。代表作に『考える手足――ALS患者と介助者の社会学』(2021、晃洋書房)がある。また石島先生は障害を抱えた学生の大学生活や合理的配慮の提供に関するFD研修の経験をお持ちである。
全国的に見て障害を抱えた学生の数が増えており、大学は多様なニーズに配慮することが求められている。ESDは一人ひとりを大切にする社会を作るための教育であることを踏まえた際に、大学のなかで一人ひとりの学生にどのような対応をしていくかを改めて教員間で考える手がかりになればと思い、今回のFD研修を企画した。
報告内容
報告では、最初に合理的配慮の基礎知識について、「障害者権利条約」「障害者差別解消法」「適格性」「個別の申し立てに基づく対話」「非過重負担」の点から説明がなされた。次に、実践上の課題について「ニーズの個別性」「障害の開示」「配慮のスティグマ化」の点から説明なされた。最後に、上述の課題について新型コロナ禍でのオンライン授業の経験からいくつかの示唆が提示された。オンライン授業は多様なニーズに対応可能であり、かつ配慮の申請をしない学生、障害の開示をしない学生にもリーチしうるものである(合理的配慮よりもバリアフリー的側面が大きい)。対面授業復帰後も、オンライン授業の様々な利点を、教員の労働強化に陥ることなく、持続可能な形で活かしていくことが重要であるとの主張がなされた。
質疑応答
質疑応答の時間では、「学生と教員の間の対話をいかに粘り強く進めていくことができるか」、「障害学生支援対応の部局との情報共有をどのように進めるか」、「オンライン授業の経験を踏まえた上での対面授業での工夫や学習効果」、「大学の単位や学士の価値の正当性を毀損することなくいかに配慮をするか」、「合理的配慮の仕組みそのものが抱える課題」、「学生が説明のコストを繰り返し払うことを考慮しつつ、学生の障害の開示のハードルの高さをいかに低くするか」等の諸点について、石島先生と参加教員の間で議論が交わされた。
おわりに
最後に、今回のFD研修は、大学における合理的配慮をめぐる教員の実践について改めて話しあう機会となった。この研修が弊学部教員の従来の考え方や行動を見直し、一人ひとりの学生を大切にする教育づくりの一助になれば幸いである。
文責:馬渡玲欧
日時 2023年1月31日(火)16:30から18:00まで
場所 オンライン(Zoom)
参加者 人文社会学部教員22名(参加率50%)、他部局4名
目的 障害を抱える学生に対する合理的配慮の基礎知識と実践について学び、議論する。
内容 16:30-17:15 趣旨説明・石島先生による講演
17:15-18:00 質疑応答
はじめに
後期に実施したFD研修では、石島健太郎先生(東京都立大学人文社会学部人間社会学科社会福祉学教室准教授)に「合理的配慮の基礎知識と実践上の課題」と題して報告をいただいた。石島先生は福祉社会学、障害学を専門としている。代表作に『考える手足――ALS患者と介助者の社会学』(2021、晃洋書房)がある。また石島先生は障害を抱えた学生の大学生活や合理的配慮の提供に関するFD研修の経験をお持ちである。
全国的に見て障害を抱えた学生の数が増えており、大学は多様なニーズに配慮することが求められている。ESDは一人ひとりを大切にする社会を作るための教育であることを踏まえた際に、大学のなかで一人ひとりの学生にどのような対応をしていくかを改めて教員間で考える手がかりになればと思い、今回のFD研修を企画した。
報告内容
報告では、最初に合理的配慮の基礎知識について、「障害者権利条約」「障害者差別解消法」「適格性」「個別の申し立てに基づく対話」「非過重負担」の点から説明がなされた。次に、実践上の課題について「ニーズの個別性」「障害の開示」「配慮のスティグマ化」の点から説明なされた。最後に、上述の課題について新型コロナ禍でのオンライン授業の経験からいくつかの示唆が提示された。オンライン授業は多様なニーズに対応可能であり、かつ配慮の申請をしない学生、障害の開示をしない学生にもリーチしうるものである(合理的配慮よりもバリアフリー的側面が大きい)。対面授業復帰後も、オンライン授業の様々な利点を、教員の労働強化に陥ることなく、持続可能な形で活かしていくことが重要であるとの主張がなされた。
質疑応答
質疑応答の時間では、「学生と教員の間の対話をいかに粘り強く進めていくことができるか」、「障害学生支援対応の部局との情報共有をどのように進めるか」、「オンライン授業の経験を踏まえた上での対面授業での工夫や学習効果」、「大学の単位や学士の価値の正当性を毀損することなくいかに配慮をするか」、「合理的配慮の仕組みそのものが抱える課題」、「学生が説明のコストを繰り返し払うことを考慮しつつ、学生の障害の開示のハードルの高さをいかに低くするか」等の諸点について、石島先生と参加教員の間で議論が交わされた。
おわりに
最後に、今回のFD研修は、大学における合理的配慮をめぐる教員の実践について改めて話しあう機会となった。この研修が弊学部教員の従来の考え方や行動を見直し、一人ひとりの学生を大切にする教育づくりの一助になれば幸いである。