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ESD演習(スタディツアー)の報告


ESD演習(スタディツアー)では、他者との共同生活を通して、他者性や協働性、異文化理解について考え、持続可能な開発とは何かを改めて捉え直し、自らのあり方を考えることを目的としています。参加学生はESDに関する既修の授業で、持続可能な開発とは何か、何をすべきかを考え、実践することに挑戦してきました。その経験を活かし、ESD演習では国内とは異なる諸状況下において、自らの暮らしや生き方をふり返りながら、持続可能な開発について改めて考えます。

実施日時:2025年2月9日から2月20日(12日間)
訪問先 :フィリピン【レイテ島(トロサ市)、ルソン島(マニラ市)】
参加学生:人文社会学部心理教育学科 4年生1名、3年生2名、
現代社会学科 2年生1名
担当教員:人間文化研究科 曽我幸代 准教授

2024年度のツアー先は、昨年同様フィリピンのレイテ島トロサ市と、ルソン島のマニラ市です。本学の協定校であるVSU(Visayas State University)の教員養成学部(VSU Tolosa Department of Teacher Education)に協力をお願いし、2月10日から17日にかけて計8日間のプログラムが実施されました。参加したのは、人文社会学部心理教育学科4年生1名、3年生2名、現代社会学科2年生1名の計4名で、心理教育学科の曽我幸代准教授が引率しました。参加者は、現地でプレゼン予定の「私の中高時代の総合的な学習の時間」について準備をするため、また英語のブラッシュアップのために事前に集中レッスンを受けました(協力:LILOT東山校)。


Day Place Plan
2/9 Move to Philippines from Nagoya, Stay in Manila
2/10 VSU Morning
 Move to Tacloban
Afternoon
 Arrive at VSU
Courtesy Call with Tolosa Mayor
2/11 VSU Visiting the main campus
Courtesy Call
Campus tour
  Cultural Show and Welcome Banquet
2/12 VSU Morning
Lecture from VSU: learning about social issues in Philippine Education
Afternoon
Fieldwork: visiting local schools
2/13 VSU Morning
Lecture from VSU: learning about Philippine Educational System
Afternoon
Lecture from NCU: Sharing Insights about the Japanese Educational System
Wrap Up
2/14 VSU Morning
Workshop: Thinking about Sustainable Life
Afternoon
Preparing for the final presentation
2/15 Break Fieldtrip
2/16 Break Preparing for the final presentation
2/17 Manila Morning
Final Presentation
Evening: Move to Manila
2/18 Manila Visiting a daycare center, a nonformal learning center in the smoky mountain
Visiting the Cultural events for elementary and junior high school students
2/19 Manila Visiting Missionaries of Charity; Home of Joy for the Sick Children
Visiting the local elementary school
Final Wrap Up
2/20 Leaving for Nagoya

本学の協定校であるVSU(Visayas State University)の教員教養学部(VSU Tolosa Department of Teacher Education)に協力をお願いし、フィリピンの教育にみる社会課題、フィリピンの教育制度について教員養成学部の教員による講義、公立学校へ訪問し、日本との関連性や相違について考える機会を持ちました。日本の教育についても、総合的な学習の時間を事例にして、どのような教育活動があされているのか、その特徴と課題について報告しました。VSUの学生とのワークショップでは、「持続可能な暮らし」について考え、一人ひとりの日常生活をふり返り、日常のなかにある持続可能性に資するふるまいを共有し合い、これからの生活において何ができるのかを考えました。互いの意見交換から、異なる意見を聴きあうことの重要性を確認しました。
マニラ市ではNPO法人RISEASIA代表理事の上田敏博さんの協力によって、スラム街にある幼児教育施設(サンデワアン・デイケアセンター)・オルタナティブ教育施設(サンデワアン・学習センター)、マザーテレサ希望の家、公立小学校を訪問し、子どもたち・若者たちと交流する機会を持ちました。さまざまな背景をもつ子どもたち・若者たちは私たちに改めて教育と社会とのかかわりを考えるきっかけを与えてくれました。
日本とは異なる住環境下でツアー当初は不便を感じたこともありましたが、参加した学生はこのツアーを通じて各々のあり様をふり返り、これからの生き方について考える機会となりました。以下の感想文から、参加した学生4名の気づきや学びが読み取れます。2024年度スタディツアー実施にご協力くださいましたみなさま、ありがとうございました。


ESD演習
米倉 翔音

 この度のスタディツアーを通して、フィリピンがどのような国であり、日本と何が違うのかを目で見て感じながら考え、その上でESDや持続可能性を基に、どのような社会変容を起こしていけるのかなどを検討した。
 私は以前、アメリカのシカゴに住んでいたが、その時の海外経験とは似て非なることを数多く経験した。先進国と途上国の違いが大きいと考えられるが、アジアの国ならではといったことを多数見ることになった。それらは、自然豊かな景観や南国フルーツといったものだけでなく、整備されていないインフラの状況など、途上国ならではの改善点も存在する。また、フィリピンの教育における社会的問題などについて学ぶ機会があったが、貧困や環境整備の問題は、日本ではなかなか考えない点であり、現地を見るとそれが良く分かった。
 VSUの先生方や生徒たちと関わる中で、皆非常に熱心に物事に取り組んでいることが伝わってきた。勉学は勿論、私たちの歓迎やイベントへの参加を意欲的に取り組んでおり、そのパッションに圧倒されるとともに、少し分けてもらったような気がする。これは、日本で同じような環境に居続けては得られないものだと感じた。
 フィリピンでは、大学生は勉学に集中するために、アルバイトをしないのが普通と言っていたが、日本では多くの大学生がアルバイトをしている。「103万円の壁」がどうこうといった話もあるが、そもそも大学生が勉学に集中するためには、アルバイトをしないという選択が容易に取れるような環境作りも必要だろう。
 フィリピンではまだ、日本の様にリサイクルやゴミの分別が徹底されていることは多くなく、アイデアとして理解はしているが、日常の実践には至っていない場合が多い。ここをグローバルスタンダードと近付けていくには、どんなプロセスが必要になるのか、私たちは何ができるのかを検討し、実行していくのが大切だと感じた。その中で、私たちの今の生活をもう一度振り返り、フィリピンの生活と比較や照らし合わせもしながら、今後の生活をブラッシュアップしていきたい。加えて、今回のスタディツアーで得た知見、価値観、思い出を忘れずに、感謝の気持ちを胸に、広い視野を持って生きていきたい。


Study Tourふり返り
廣瀬 花梨

私がこのスタディツアーで学んだことはコミュニケーションの大切さである。これは今回のツアーで訪れたVSUの大学生や講師の方から、これからの世界に必要であると何度も聞いたことであり、それが様々な問題を解決する第一歩であるということは、私もずっと前から理解しているつもりであった。しかしその必要性をこのスタディツアーで現実味を帯びて感じることがあった。
スタディツアー10日目に、私たちは首都マニラでスラム街の探索とツアーのコーディネーターの方が立ち上げた学校のボランティアに参加した。私はスラム街で車から顔を出した瞬間、まずゴミの腐った臭いを嗅いでこうした場所が作り続けられることへの怖さと、この現状に対してなにができるのかという焦燥感に駆られた。多くの野犬やボロボロの家とゴミだらけの道はテレビや教科書で見る通りであった。しかし、その一方で案内されてスラム街を歩いていると、すれ違う多くの住民が私たちに笑顔で挨拶してくれ、スラム街を治安の悪い場所だと想像していた私は再び衝撃を受けた。スラム街の幼稚園や学校での交流でも、子どもたちの人あたりのよさや学びに対する熱心さを強く感じた。そして自身の予想していなかった人々との交流の中で、実際に行ってみないと知ることができないことがたくさんあることを知った。しかしそうした経験の中で、このコーディネーターの人がどのようにして自分と違う環境で育ってきた人たちの求めている支援を知ることができたのかという疑問が湧いた。そこでコーディネーターに質問し学んだことが、分からないからこそコミュニケーションをとって知るということである。その方は30年以上フィリピンで生活し、英語以外にも現地のタガログ語を話すことができた。スラム街を歩いている時には、多くの住民とタガログ語で近況を話し合っていた。スラム街以外の学校でもコーディネーターの方がタガログ語で話し始め、それに子どもたちが驚いて顔を見合わせた後、嬉しそうにしていた姿が印象的であった。それを見た私は、相手を理解しようとコミュニケーションを取ることや、相手に合わせて語学力を身につけることがいかに重要であるかが分かった。
一方私は、このツアーが初めての海外でまだ英語すらも使い慣れておらず、ツアー中もほかのメンバーに置いていかれる焦りを感じることがあった。それでもツアー参加当初よりは英語を話せるようになっているが、まだ初歩的な会話しかできておらず、やりきれない気持ちがある。これまで日本では受験や目先の課題のために英語を勉強していたが、このツアーを通してコミュニケーションを取るために英語を学びたいと思った。人との交流と楽しみ、また自分の知らない人々のことを知るために語学力をつけ、再び海外に挑戦したいと考えている。


理念と経験を学ぶフィリピンスタディツアー
キム ジウン

私がこのスタディツアーに来ることを決めた理由は、チャンスになると思ったからです。半年間交換学生として日本に通いながら他の文化を経験して勉強することに興味を感じました。もともとフィリピンは私にとって難しい国でした。英語で話すのが難しく、文化がかなり違うことを知っていたからです。この機会でなければいつまでも迷ってばかりいそうでフィリピンに行きました。
フィリピンの第一印象はマニラだったので、思うほど貧しくないのかなと思いました。高いホテルがブロックを埋め尽くしていたからです。しかし、タクロバンに到着して、フィリピンの貧富の格差の大きさを感じることができました。
タクロバンでの初日はおもてなしの中で通り過ぎました。食べ物を経験し、環境に適応しなければなりませんでした。そしてメインキャンパスと町を見回しました。フィリピンではどこでも自然を感じることができました。バナナやココナッツの木が自由に伸びているのは、都会では見られないことです。私たちは、お互いの生に合った方法で生きていたことを実感しました。
講義でフィリピンの教育に関する社会的イシューを聞きました。フィリピンの教育問題だけでなく、韓国と似たような問題も発見することができました。たとえば、就職と学業の間の関連性を見つけるのが難しいということです。それに伴う理由は様々ですが、重要なのは「学生たちが望む勉強」が正しいのかということです。韓国では多くの学生がこの問題で悩んでおり、熟考が必要な問題だと改めて感じました。
そして、日本の教育に関する発表がありました。私は日本に行った時、初めてSDGsについて知りました。学生時代から未来に対する一つの指標を見るのが印象的でした。韓国にもありますが、あまり知られていないからです。この概念は自分の文化を理解して知らせ、地域、自然、人々のために何ができるかを考えるのに良い目標になると思いました。フィリピンと日本の話を聞いていると、私も理想として持つべき概念が足りないという気がしました。人生の道しるべとなる価値観、大切にしなければならないこと、守らなければならないこと、こうしたものが必要です。
今回のスタディツアーで得たのは、理念と経験です。私は他の文化を構成する人の生と食べ物を経験し、人々と交流しました。現地で数日を過ごしたことで全部理解することはできませんが、直接見たのとメディア越しに見るのは体感の程度が違いました。マニラの深刻な環境の違いは、多少衝撃を与えました。しかし、教育を通じて変わろうとする人々の姿を見て、理念の重要性を感じました。現在の人生に感謝し、どのように生きていけばよいのか、今私にできることは何かをずっと熟考するきっかけを持ちました。
参加できて嬉しかったです!


持続可能な暮らし、豊かさについて問い直した12日間
籾山 明日香

フィリピンでの12日間は、「豊かさ」とは何か、そして「持続可能な暮らし」とは何かを深く考えさせられる時間だった。タクロバンで出会った人々は、人との関わりをとても大切にし、温かく関わり合いながら暮らしていた。そしてその輪のなかに迎え入れてもらうなかで、私は自分自身の全てを受け止めてもらえた、人の暖かさと安心感、つながりの心地よさを感じた。また、彼らは必要な分の水や電気を大切に使い、地産地消の食生活が営まれているようだった。そして、未来の教育を担う学生や教員たちは、より良い教育のあり方を模索し、子どもとどのように関わるべきかを必死で学んでいた。その姿に、私は深い感銘を受け、持続可能な暮らしが営まれているように感じた。
一方で、私たちの日本での生活はどうだろうか。便利なものに囲まれ、エネルギーを無意識に消費し、高度な知識や技術を身につけているが、それは本当に「豊かさ」と言えるのだろうか。持続可能な暮らしについて学ぶ機会は増えているものの、実際の生活にどれほど活かされているのかを振り返ると、暮らしに根付いているとは言い難い。学びが単なる知識の蓄積に留まっているのではなく、自分自身の暮らしに結びつき、実践されてこそ意味があるのだと痛感した。
また、教育の重要性についても強く考えさせられた。子どもたちが未来をつくる存在であり、その子どもたちを育てる教育者の意識や姿勢が、彼らに与える影響は計り知れない。教えることが、単なる知識の伝達ではなく、生活そのもので体現され子どもたちが学ぶことのできる環境が大切ではないか。フィリピンの先生の姿を見て、このことの重要性を再認識するともに、持続可能な暮らしを実現するためには、人と人、人と自然といったつながりや、自分自身とのつながりを見つめ直すこと、そしてESDを生活の一部として実践していくことが不可欠であると強く感じた。
これまでの生活のなかだけでは、自分が便利なものに依存し、資源が有限であることを忘れたかのように消費を繰り返す日々に気が付かなかっただろう。ゴミの分別をするなど最低限の意識はあっても、誰かのつくった仕組みをなぞらえ、企業のルールに従うだけで、その意味を深く考えることがなかったことに気付かされた。フィリピンでの経験を通じて、すでに手にしているものをどのように活用し、持続可能な生活をどのように実践していくべきかを真剣に考えるようになった。
「豊かさ」とは何か、その問いと向き合い、私は今後どのように暮らしていきたいか考えている。そして、その暮らしの中で、他者や環境との関係を尊重し、共によりよい未来を築いていきたい。有限なのは、資源だけではない。命もまた有限であることも実感した。日本では平均寿命が伸び、私たちはその有限性を実感しにくくなっている。しかし、フィリピンの人々の生き様を目の当たりにし、「生きる」ということの意味を改めて考えさせられた。マニラでは、「無知が一番危険である」ことを強く実感した。知識を持つことが、自分自身を守り、よりよい選択をするためにも大切であり、そのために教育が必要とされているのだろう。
今回の経験を通して、私は自分の生活を見つめ直し、持続可能な未来のために何ができるのかを真剣に考えるようになった。便利さに頼るのではなく、手元にあるものを最大限活用し、一つ一つの行動を意識することが大切である。フィリピンで感じた「豊かさ」を、これからの生活の中で実践し、心から「豊かである」と思える暮らしを築いていきたい。


オープニングセレモニー

オープニングセレモニー

ワークショップのあとに

ワークショップのあとに

ファイナルプレゼンテーションの前に

ファイナルプレゼンテーションの前に

地元の小学校で

地元の小学校で

事前英語研修:LILOT東山校 https://www.40hatten.com/
ツアー実施協力(レイテ島) VSU-DTE https://www.facebook.com/tolosa.dte/
ツアー実施協力(ルソン島) NPO法人RISEASIA代表理事 上田敏博さん www.riseasia.net