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卒業生の留学体験記


国際文化学科での学びを通じて、海外への想いをより一層強くし、夢をかなえた先輩たちがいます。在学中に大学の交換留学に参加した人、自らの意志で選んだ留学先・プログラムに挑戦した人、社会人になってから海外生活への憧れを実現した人など、その形はさまざまですが、共通しているのは「夢を諦めなかったこと」。いろんな形で夢をかなえた卒業生たちの今、そして留学体験記をご紹介します。

【吉川亮さん(アメリカ インディアナ州在住)2012年卒業】

(2023年10月寄稿)
2012年に国際文化学科卒業後、新卒で日系事業会社に入社しキャリアをスタートしました。社会人10年目の2021年より米国大学院 (University of MichiganのFull Time MBA Program)に入学、2023年春に卒業したのち現地に残り、現在は米国の事業会社に勤務しています。

留学・海外生活を志した理由

幼少期よりサッカーに打ち込み、海外リーグに挑戦し活躍する日本人選手に憧れを持ったことが最初のきっかけです。また高校時代の家庭教師の方から「留学は語学力向上はもちろんのこと、世界や自分自身を知る良い機会となる 」という実体験を聞き、私も学部時代に留学や海外経験をしてみたいと強く思うようになりました。そして、海外に興味があったため、国際関係・文化を学ぶことができる国際文化学科を志望しました。

University of Michigan卒業式の写真(2023年4月撮影)

University of Michigan卒業式の写真(2023年4月撮影)

学部在学中、3つの留学プログラムに参加

入学後、予想以上にたくさんの海外経験の機会があることを知り、インドネシアフィールドワーク、Disney Worldでのインターンシップ、イタリアローマでの国連食糧農業機関(FAO)インターンシップに参加しました。手広くやるよりも、どれかにフォーカスした方がいいのでは?という想いもありましたが「迷ったらとりあえずやってみる、後々後悔だけはしたくない」という性格からチャンスがあれば積極的に参加しました。現在では廃止されたプログラムもあるかもしれませんが、私なりに感じたそれぞれのプログラムについて記載してみようと思います。
■インドネシアフィールドワーク

実際に滞在(ホームステイ)させて頂いたトラジャ村の伝統的住居-Tongkonan

実際に滞在(ホームステイ)させて頂いたトラジャ村の伝統的住居-Tongkonan

10日ほどインドネシア スラウェシ島の山村、島で引率教授2名、学生10名で、現地の方と生活を共にし、実地調査を行いました。ちょうどラマダーンの時期だったこともあり、現地の方の生活を体験したいという思いから、当初予定していた調査とは別に断食を行うことを申し出、実施しました。
恥ずかしながらそれまでの私は、イスラーム教に対してどこか厳格で近づきがたいイメージを持っていたのですが、現地の方々や学生と交流する中で、イスラーム教の柔軟で合理的な部分があることを身をもって学びました(この経験は、その後の留学でもイスラームの方と交流する際に役立ちました)

トラジャ村の祭りに参加した際の一コマ(右が吉川さん)

トラジャ村の祭りに参加した際の一コマ(右が吉川さん)

短い期間でしたが、知らず知らずのうちに固定概念に囚われている自分を知ると同時に、現地で身をもって経験したことが己の糧となることを学びました。そして、まだ見ぬ世界や環境へ身を投じた際の一種の緊張と高揚感、またそこで様々な価値観に触れることで自身を客観視し学びにつなげることを好む、という自身のパーソナリティについても認識することができました。
■バレンシア(ディズニー)国際カレッジプログラム
約2ヶ月University of North Carolina附属の語学学校に通い、その後約半年間フロリダのDisney Worldでインターンシップを行いました。私が担当したRoleはMagic KingdomでのParade Audience Controlというもので、ゲストに安全にparadeを楽しんでもらえるように、約30人の国際色豊かなメンバーと協力しながらparadeをコントロールするものでした。
TOEFLのスコアや現地面接官とのInterviewは何とか突破したものの、自身の英語力で本当に現地で働けるのか?と悩むことも多く、最初2ヶ月の語学留学当初はホームシックになりかけたこともありました。Disneyでのインターンシップが開始されてからも、最初のトレーニングで一人だけ理解が追いつかず、マネージャーから個別に指導を受けることもありました。
また、ゲストから“Speak English”と吐き捨てられることもあり大変な時も多かったのですが、さまざまな国から集まった同年代の同僚にも恵まれ徐々に仕事の要領も覚えていき、最終的にはゲストとの会話を楽しむことが出来るようになりました。留学する前の自分では考えられなかったことです。
もちろん語学力もある程度向上したとは思いますが、それよりも海外での生活・インターンシップを通し、日々降りかかってくる困難に対して諦めずに行動し解決していくことで、良い意味での図太さや精神的にタフになったことが、一番の収穫だったかと思います。
■国連食糧農業機関(FAO)インターンシップ

FAOでお世話になった水産局の方々(前列右が吉川さん)

FAOでお世話になった水産局の方々(前列右が吉川さん)

卒業前の約3ヶ月、イタリアローマにある国連食糧農業機関FAO(Food and Agricultural Organization)にてインターンシップを行いました。水産局という部署に派遣いただき、翻訳業務などを担当させていただきました。正直、水産関係のバックグランドもなく、大した語学力もない自分が組織に貢献できたとは言えないのですが、国連機関というダイバーシティに溢れた環境でのさまざまな出会い、特に国際舞台で果敢に挑戦する日本人の方から日々お話を伺い非常に刺激を受けました。そして、自身のキャリアや目標に対して、自ら考え行動していくことの必要性を学ぶ大変貴重なきっかけとなりました。
こうした経験がなければ、正直その後社会人になって海外大学院に行くことも考えられていなかったと思います。そういう道があることすら知る機会もなかったかもしれません。
振り返ると、あの時の刺激、自身で体感したことがその後社会人となり大学院を目指す中で、仕事との両立の中で何度も諦めそうになりながらも、モチベーションを失わずに最後まで完走できた要因となったと思います。

大学生活を振り返り、今の生活に活かされていると思えること

自身の大学生活を振り返ってみて、思ったことを3つ挙げてみます。
1)積極的にアクションを起こすこと
前述の通り学部時代には留学や海外プログラムに参加してきたのですが、実際に現地に行って体感することが糧となると感じることは多々あります。またチャレンジをする中で数えきれない程の失敗もしてきましたが、それを成長の機会と前向きに捉えて積極的に行動してきたことが、結果的にはよかったかと思います。
また、何かにチャレンジする中で、そもそもその機会に巡り合う、チャンスを獲得するには運と縁というものも大切になってきます。良い運・縁は偶然降りかかってくるものと言えばそれまでですが、そういった運・縁に巡り合うためには「常日頃からアンテナを高くし行動を起こす」ことが大切かと考えています。
2) 実際に人と話をし、アドバイスをもらうこと
留学や就職活動などを実際に経験した知人・先輩達から体験談を聞いて、良い準備、モチベーション維持、具体的なアクションプラン等のTipsをもらうことも大切かと思います。当時、留学・就職活動に関してゼミの先輩や高校時代の部活の先輩などに頻繁に質問し、アドバイスを頂いていました。経験者に実際に話を伺う中で、自分では気づかなかった新たな発見や改善点が見つかり、非常に助かりました。後輩の私に対して失敗談まで共有いただき、フィードバックの時間まで割いてくれた先輩達には感謝しかありません。
3)つながりを大切にすること
少し重複してしまいますが、人とのつながりは大切と思います。卒業してから10年以上経っていますが、当時お世話になった教授やキャリア支援センターの方とは今でもやりとりをさせて頂いています。また留学やインターンシップで知り合った方々とのつながりも非常に貴重と感じています。私は卒業して気付きましたが、社会人になると所属組織外において、新たな人間関係の構築は学生時代に比べてどうしても難しくなります。会社などの所属組織の枠を越えて、困った時に相談に乗って頂きアドバイスを頂ける、また利害関係なくフランクに話せる人間関係というのは本当に貴重です。
上記3つを意識し大切にすることは、卒業後のキャリアでも活きているのではないかと思っています。海外大学院を目指した際も、経験者とネットワークを築きながら必要に応じてアドバイスをいただきながら進めていきました。仕事と受験の両立は想像を絶するほど大変だったのですが、日々、一歩ずつアクションを蓄積することで最終的には運と縁も味方し、目標を達成することができたかと思います。

後輩たちへのアドバイス・メッセージ

「一歩踏み出すこと」こそが、夢に到達する唯一の方法
名市大は良い意味でスモールコミュニティです。教授と学生との距離も近く2年生からゼミに所属し学べる大学は多くはないのではないでしょうか。小規模だからこそ、教授やキャリア支援センターの方、学生間のつながりも強固かと思います。こうした強みを活かさない手はないと思います。
また名市大には魅力的な留学プログラムがたくさんあります。上述の通り、そういった機会やチャンスを逃さずにアンテナを高く保ち、具体的にアクションをしていくことがよいと思います。
最初は緊張しますが、実際に説明会に参加してみる、経験者から実際に話を聞いてみる、テスト対策を始めてみるなど、一歩を踏み出すことが大切です。もちろん、その中でたくさんの挫折を経験することもあるかと思います。私は今でもそうです。最初からうまくいくことはほとんどありません。鶴と亀に例えると、私は完全なる亀タイプです。それでもほんの少しでも前進する
日々の行動が、自分には到底無理だと思っていた世界に到達するための唯一の方法だと信じています。
悩んだら人に会って話を聞くのが一番
自身の進む道がわからないときに、1人で考えていても明確な答えが出てくることは、私の場合ほぼありませんでした。
書籍を読み漁った時もありましたが、読むだけで自身の生活、仕事、考え方の深層にまで影響を与え、日々の行動を変えられるほど私の要領はよくなく、やはり人に会って話を聞くのが一番でした。
仕事・人生で悩んだ時、海外大学院を目指すことを決める時には、学生時代の同期・先輩・後輩、新卒就活時に知り合った先輩、高校時代の先輩、FAO時代のつながり、大学院受験予備校で知り合った戦友など、これまでのネットワークを総動員して必要に応じてアドバイスを頂き、そこから自分なりの考えを持って決断し行動をしてきました。
「正解」なんてわからない。後悔しない選択を
政情不安や感染症の拡大など、これまでの常識では考えられないことが起こりうる世の中において、将来を予測することはより一層困難となり、「正解」を定義することは非常に難しくなったと考えています。テクノロジーの進展で変化のスピードも早くなり、ある経験やスキルを有していたら、将来安泰・キャリア成功かなんて分かりません。そして自ら決断し行動したことが、「正解」かなんて誰にも分かりません。
大学院卒業後に米国に残ることにした私の決断が「正解」だったかは、今このタイミングでは分かりませんが、後々振り返った時に「ベストな決断だった」と私自身が胸を張って言えるように、日々精進していくことが大切なのではないかと考えています。
偉そうなことを言える立場では全くないのですが、皆さんも決断し行動したことがベストだと思えるように、是非積極的に行動し挑戦して頂ければと思います。名市大OBとして心から応援しています。

【榎本愛生さん(アメリカ インディアナ州在住)2021年卒業】

(2023年6月寄稿)
~「今やりたいのはこれだ」という正直な思いを大切に~
こんにちは。国際文化学科卒業生の榎本愛生です。2015年に名市大に入学し、2021年に卒業しました。卒業後、わたしはアメリカのインディアナ州にあるインディアナ大学ブルーミントン校で大学院生として勉強しています。2023年5月にTESOL and Applied Linguistics(英語教育・応用言語学)専攻で修士課程を修了し、2023年8月より、Second Language Studies (第二言語習得)専攻で博士課程に進学します。

在学中に2度の留学を経験

わたしは大学時代に二度海外留学をしました。一度目は大学三年生時のオーストラリア語学留学です。こちらは名市大の留学プログラムではなく、私費で英語を学びに7か月間留学しました。大学2年生時に英文法のゼミに入り、元々好きだった英語に更に興味を持ち、英語をもっと勉強したいと思ったのがきっかけです。オーストラリアで通っていたスクールで、ある英語の先生と出会い、その先生のお人柄や、「授業が楽しみ過ぎて寝られない」と思うほどに実のある授業に更に刺激を受け、「英語を教えたい、そのためにもっと勉強したい」という思いが芽生えました。
帰国後、一度は就職活動を始めましたが、一度目の留学で芽生えたこの夢を諦めきれず、就職活動を止め、大学生5年目に二度目の留学をしました。
こちらは、名市大の留学プログラムの一つ、「バックネル大学日本語ティーチングアシスタント(TA)奨学生派遣制度」であり、アメリカのペンシルバニア州、バックネル大学に約9か月にわたり滞在しました。そしてその後、大学院進学を決意することになるのですが、これは、バックネル留学前から決めていたわけではありません。アメリカの大学院へ進みたいという気持ちが大きくなったのは、実際にバックネル大学でアメリカの学生さんの学びの姿勢や成長に刺激を受けたからです。履修した授業の中では「ディスカッションの授業をとっているのか」と思わされるほどに意見や質問を堂々と発する学生にたくさん出会いました。また、TAとして接した日本語の学生たちは、学期の始めから終わりにかけて見違えるほど日本語で意思疎通ができるようになっていました。そんな彼らを間近で見て憧れを抱くようになり、「私もこんな環境で学びたい」という思いが強くなりました。

英語教育・応用言語学MA(修士号)の修了証書を手にする榎本さん

英語教育・応用言語学MA(修士号)の修了証書を手にする榎本さん

学費のハードルをティーチングアシスタント制度で乗り越え大学院進学へ

アメリカの大学の学費は日本の大学の学費よりも高額なため、進学への大きなハードルの一つになります。この学費の問題を乗り越える一つの方法が、TAやRA(リサーチアシスタント)として大学機関内で働くことです。アメリカの多くの大学はTAやRAのような、大学院生が働きながら研究できる制度があります。日本語TAもその制度の中の一つのポジションであり、わたしは幸運にもバックネルでの経験が活きて、現在インディアナ大学でのそのポジションをいただくことができています。
インディアナ大学の場合、full-time(常勤)の日本語TAとして働くと、学費の免除に加え、一人暮らしの生活費を賄えるほどの月々の給料がもらえます。もちろん、自分の授業、課題、研究と並行して週に20時間程働かなければいけないので、休日も含めて、時間を上手く使って生活していかなければなりません。しかし、この制度のおかげで、学費の問題を乗り越えてアメリカの大学院で学ぶことが実現できています。

共に学んだ友人と(榎本さん:左)

共に学んだ友人と(榎本さん:左)

アメリカの大学院進学までの過程を振り返り、今自分が目指した場所でやりたかったことができている大きな理由を一つあげると、それは、自分の一番やりたいことに正直に向き合ってきたからだと思います。
長期海外留学を決断する際、自分にできるのか、帰国後どうするのか、卒業が遅れてしまう等、避けられない様々な葛藤や迷いを経験しましたが、わたしは自分の心の中の「今やりたいのはこれだ」という正直な思いを優先し続けました。もちろん、長期留学の選択と引き換えに諦めなければならなかったこともありましたが、やりたいことに素直に従ってきた今までを後悔したことは幸い今まで一度もなく、学びたかったことを学べる今の環境をとても幸せに思います。
一人で夢を追求することは体力的・精神的に大変なことでもあります。そんな時は、大学の教授、先輩、国際センターの方々に話してみてください。きっと背中を押してくださいます。名市大の学生の皆様が、夢に向かって悔いのない大学生活を送れることを願っています。