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2021年 第3期「脳を知り、脳疾患を治す」


《ウエブ配信》最新医学講座 オープンカレッジ 2021年 第3期のご案内
  • [開講日程] 令和3年11月12日(金)~令和4年1月7日(金)
  • [応募受付期間] 令和3年9月27日(月)~令和3年10月15日(金)
  • [選考結果] 令和3年10月27日(水)
  • [コーディネーター]名古屋市立大学大学院医学研究科 認知症科学分野 教授 齊藤 貴志
 自然科学最後のフロンティアである「脳」を理解するための研究は、人間を特徴づける脳機能がいかに担われているのかを理解し、その破綻により引き起こされる疾患のメカニズムを明らかにすることです。本企画では、細胞レベルから個体レベルでの階層的理解のために、また、発達期から老齢期に至る脳機能変化を理解するための研究について、名古屋市立大学で進行中の世界の最先端研究を紹介します。これまでに脳の何が分かってきて、これから何をなすべきなのか?を現場の研究者から共有して頂きます。

第1回 11月12日 (金) 配信

認知症・アルツハイマー病を知る、そして治すために

名古屋市立大学大学院 医学研究科・認知症科学 齊藤 貴志
認知症・アルツハイマー病の克服は、超高齢化社会における喫緊の課題です。しかし、これまでのところその治療は対症療法止まりで、有望な薬剤候補もほとんどが臨床試験をクリアできていません。近年、長年の病理学的解析と遺伝学、最新のイメージング技術からいくつかの創薬標的が絞り込まれてきています。本講義では、その展望と薬剤治療を開始するための早期診断法の現状・問題点も併せて概説致します。

第2回 11月19日 (金) 配信

線虫を通してヒトの脳を理解する

名古屋市立大学大学院 理学研究科・神経回路機能学 木村 幸太郎
線虫C. エレガンスは体長 1 mm程度の生物である。「小さなイトミミズ」を思い浮かべていただければだいたいイメージできるのだが、世界中で何百人もの一流研究者たちが「脳の仕組み」を理解するために線虫を研究している。この講義では、ロボット技術や人工知能技術を用いて線虫から「記憶」や「判断」や「感情」の仕組みを理解する私たちの取り組みを紹介したい。

第3回 11月26日 (金) 配信

記憶研究の最先端~思い出す、思い出せない脳のしくみ~

名古屋市立大学大学院  医学研究科・認知機能病態学 野村 洋
昔の出来事は思い出しづらいものです。また、加齢や認知症の進行によって過去の記憶は思い出しにくくなります。しかし忘れてしまったことでも、ふとした瞬間に思い出せる場合があるため、記憶は脳の中に残っているはずです。私たちは記憶を思い出す脳のしくみを明らかにして、忘れてしまった記憶を取り戻す治療法の開発を目指して研究を進めています。この講義では、記憶に関する脳のしくみについて最先端の研究を解説します。

第4回 12月3日 (金) 配信

歯周病および歯の喪失とアルツハイマー病

名古屋市立大学大学院 医学研究科・神経生化学 鄭 且均
疫学調査から、歯周病や歯の喪失はアルツハイマー病のリスクを高めると報告されているが、そのメカニズムは分かっていない。特に、アルツハイマー病患者では、歯磨き自立度や口腔ケア管理能力が低下しているため歯周病や歯の喪失を引き起こして、アルツハイマー病を悪化させる。本講義では、歯周病や歯の喪失がいかにして脳内のアルツハイマー病の分子病態に関与するかを、現在われわれが行っている基礎研究の結果から得られたデータを用いて解説したい。

第5回 12月10日 (金) 配信

こどもの脳の発達―神経細胞の移動について最近分かったこと―

名古屋市立大学大学院 医学研究科・神経発達・再生医学 竹村 晶子
脳の神経細胞のほとんどは胎生期につくられて、生まれた時には働くべき脳部位に存在しています。しかし最近、生まれた後のこどもの脳でも神経細胞が新しく作られて、脳内を移動していることが明らかになりました。この生まれた後移動する神経細胞は、ヒトが行動や感情をコントロールしたりコミュニケーションをとったりするのに必要な前頭葉という脳部位に移動します。本講義では、こどもの脳でどのように新しい神経細胞ができて正しく移動していくのかご紹介します。

第6回 12月17日 (金) 配信

筋萎縮性側索硬化症ALSの治療薬開発の現状と発症機構解明へ向けた最先端研究

名古屋市立大学大学院 薬学研究科・病態生化学 築地 仁美
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)は、筋肉を動かす神経が冒され、年齢を重ねるにつれ筋肉が萎縮し死にいたる難病です。ALSの発症機構は複雑で、はっきりわかっていないことが多いため、現時点で有効な治療薬はありません。しかし近年、iPS細胞を用いた研究などで大きな進展があり、多くの化合物が治療薬候補として臨床試験に進んでいます。本講演では、我々の研究を含め、ALSの発症機構の解明を目指した最先端の研究をわかりやすくお話しします。

第7回 12月24日 (水) 配信

発達障害・てんかんと遺伝・遺伝子

名古屋市立大学大学院 医学研究科・神経発達症遺伝学 山川 和弘
てんかんや自閉症などの神経発達障害には遺伝的背景が大きく寄与し、近年のゲノム解析技術の進歩により多くの原因遺伝子が同定されてきています。また、近年それら疾患を有する患者さんの数が増加してきていることが大きな社会的問題にもなっています。我々のグループでは、発達障害や知的障害、更にはそれに合併するてんかんの発症に関わる複数の原因遺伝子の同定、更にはモデル動物の作成や、それを用いた発症機序の解明を進めています。本講演では、今までの我々の研究で明らかになったことを交え、これら疾患の遺伝的背景などについて分かり易く紹介します。

第8回 1月7日 (金) 配信

脳卒中治療薬の現状と課題

名古屋市立大学大学院 医学研究科・認知症科学 肱岡 雅宣
脳卒中は脳梗塞、脳内出血くも膜下出血の総称で、本邦における疾患別死亡割合の第4位に位置する疾患です。梗塞や出血が生じる脳部位に応じて脳機能が障害され、片麻痺や言語障害、認知機能低下を呈します。近年の食生活の変化により患者数が漸減しているものの、ひとたび発症すると重篤な予後不良を呈し永続的なQOLの低下に苛まれるため、有用な治療方策が必要です。本講義では脳卒中治療のなかでも『治療薬』に焦点を当て、作用機序を含めた治療薬の現状と課題について概説した上で、近年の基礎研究(特に脳内出血)についても紹介します。