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本学医学研究科・脳神経外科学講座が行っている共同研究課題が、令和5年度「スーパーコンピュータ『富岳』成果創出加速プログラム(次世代超高速電子計算機システム利用の成果促進)」に採択されました


この度、本学医学研究科・脳神経外科学講座が、東京都立大学大学院・システムデザイン研究科・機械システム工学域、大阪大学大学院・基礎工学研究科・機能創成専攻生体工学領域・生体機械学講座・バイオメカニクス研究室、東京大学大学院・情報学環・生産技術研究所、滋賀医科大学・放射線医学講座と行っている共同研究が、文部科学省の令和5年度「スーパーコンピュータ『富岳』成果創出加速プログラム(次世代超高速電子計算機システム利用の成果促進)」に採択されました。

研究課題名:「『富岳』で実現するヒト脳循環デジタルツイン」
研究代表者:伊井 仁志(東京都立大学大学院・システムデザイン研究科・機械システム工学域・准教授)
本学分担研究者:山田 茂樹(名古屋市立大学・脳神経外科学講座・講師)

事業趣旨(文部科学省HP抜粋)

スーパーコンピュータ「富岳」(以下、「富岳」という)は、世界最高水準の総合的な性能を有するシステムであるとともに、Society 5.0等の実現に資する大規模計算基盤です。我が国で実施する他の研究開発プロジェクト、アカデミア、産業界、行政組織等との連携体制を構築しながら、「富岳」を用いた新たな科学的・社会的成果の創出や社会実装を強力に推進する必要があります。
「富岳」成果創出加速プログラムは、上記の目的を達成するため、「富岳」を最大限に活用し、社会的・科学的課題の解決に資するアプリケーション開発及び研究開発に取り組み、世界を先導する成果を早期に創出することを支援するため、文部科学省が令和2年度から実施している事業です。
■研究の概要

個人毎に適した医療を実施する個別化医療は、健康長寿社会の発展に欠かせないものとなっています。この個別化医療の実現に向け、実空間で得られる情報を基にサイバー空間で対となる双子を作り出す「デジタルツイン」の展開に関心が高まっています。医療分野におけるデジタルツインでは、実空間の医用計測等で得られる様々な生体情報を基に個々状態をサイバー空間で再現しin silico(コンピュータ)モデルで予測することで、診断・予防・手術手技選択といった実空間での医療に繋げていくことが主な目的です。この実現には、デジタルツインで要となるサイバー空間上でのin silicoモデルやその妥当性検証、それらを計算機上に実装するフレームワーク、実用に向けたシステムの評価といった、技術的側面の検討と発展が必要不可欠です。
脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中をはじめとする脳血管障害は、老衰を除き、日本人の死因第3位と高い割合を占めているだけではなく、寝たきりの原因の第2位とQOL(Quality of life)に大きく関係します。脳循環障害では、いずれも血液や脳脊髄液・間質液の流動およびそれに起因した細胞レベルの力学的負荷が病気移行へのトリガーとなることが多くの基礎研究から示されていますが、そのような局所の流動変化が大域的な循環場とどのように関係するか明らかではなく、臨床で取得されるデータがこうした病態の予測評価に十分に活用されていないのが現状です。

このような現状において、個人毎の脳循環の状態を再現・予測可能な「脳循環デジタルツイン」の実現は、その予測評価精度を大幅に向上させる可能性を秘めています。この実現には、多数の臨床データに基づく解析を迅速に実施し脳循環情報を取り入れた脳循環in silicoモデルを構築・発展するプロセス、また試用を通じたモデルを評価するプロセス、さらにはシステム構築に向けた設計が重要であり、大学等の研究機関、医療機関さらに医療データの扱いに長けているソフトウェア企業と密に連携し開発を進める必要があります。そのような取り組みを進めるにあたり、医療データの秘匿性の観点から、企業が提供するクラウド環境を試行的に利用することは難しく、また、多くの臨床データを用いた物理シミュレーションの実施には、一条件の解析にかける時間を減らしつつ異なる条件の解析を平行して実行できるようなHPCI環境が必要不可欠であり、現状、高いアプリ性能を有し大規模な計算環境を備える「富岳」を除いて他にはありません。
本事業課題では、脳循環のin silicoモデルと大規模臨床データを用いた「ヒト脳循環デジタルツイン」を「富岳」が持つ豊富な計算環境を活用し実現することを目的とします。脳循環in silicoモデルの基盤となる計算力学解析技術の構築、患者個々の脳循環状態を再現することが可能なデータ同化モデルの構築を行うともに、数百例規模の臨床データをベースにしたパラメトリック解析を実施することで機械学習に基づく代理モデル化を行います。さらに、「富岳」をクラウド利用するフレームワークを開発し、新たに得られる臨床データに対して医療機関が主体となり試行することで、脳循環デジタルツインの社会実装の実現可能性を検討していきます。
この実現により、例えば、ある個人Aが病気に移行した際の脳循環情報を「ヒト脳循環デジタルツイン」を介して別の個人Bに伝達される仕組みが生じ、潜在的な病気移行を予測することが将来的に期待されます。

医学研究科 山田 茂樹 講師

■採択にあたってのコメント
(医学研究科 山田 茂樹 講師)

デジタルツインを用いた脳循環予測が「富岳」を活用する研究課題として採択され、今後、本研究が大きく飛躍すると期待しています。
本共同研究に私達が参加するきっかけとなったのは、2020年12月からスタートした【脳循環代謝数理モデル研究会】で、名古屋市立大学・脳神経外科(山田 茂樹講師)、滋賀医科大学・放射線科(渡邉 嘉之教授)、東北大学・脳神経内科(伊関千書講師)、東京大学大学院・生産技術研究所(大島まり教授)、大阪大学大学院基礎工学研究科・機能創成専攻生体工学領域(和田成生教授、大谷智仁准教授)、東京都立大学大学院・システムデザイン研究科・機械システム工学域(伊井仁志准教授)、富士フィルム株式会社(伊藤広貴氏)を現主要メンバーとする脳医用画像と計算科学・バイオメカニクスの専門家が集まった医・工・産の共同研究です。コロナ禍でスタートしたため、ずっとWeb開催でしたが、2023年3月4日に名古屋市立大学・臨床研究棟・臨床セミナー室で初めてリアルの研究会(第6回)が開催され、大変盛り上がりました。第7回は 2023年8月4日に 東京大学の生産技術研究所で開催予定です。研究にご興味がある方がおられましたら、私までご連絡下さい。