Foxp3+ CD4+制御性T細胞は樹状細胞をコントロールして新興SARS-CoV-2抗原に対する抗原特異的免疫反応を誘導する
活動の概要 | 【研究の目的】 ・新型コロナウイルスSARS-CoV-2によるパンデミックは世界の人々の人命を脅かすだけでなく、経済や平和にも大きな打撃を与えています。SARS-CoV-2抗原に対する獲得免疫の誘導がどのようにコントロールされているかを明らかにすることは大変重要です。 ・私たちは、制御性T細胞の抑制を一時的に除くことで、外から投与されたSARS-CoV-2抗原のS1タンパクに対して獲得免疫系が誘導されるかをマウスモデルで検討しました。 【研究の概要】 ・制御性T細胞を一時的に除いてS1タンパクを投与すると、アジュバントがなくても樹状細胞が成熟して抗原提示を行い、有効な獲得免疫が誘導されます。 ・産生された抗体は生きたSARS-CoV-2ウイルスの活性を中和する機能を持っていました。 ・既知の有効なアジュバントの一つであるpoly ICと同程度に獲得免疫を誘導できました。 |
活動の時期 | 2021年12月(論文発表, プレスリリース) |
関連URL | プレスリリース |
researchmap URL | https://researchmap.jp/8186 |
関連する論文 | “Foxp3+ CD4+ regulatory T cells control dendritic cells in inducing antigen-specific immunity to emerging SARS-CoV-2 antigens” Ryuta Uraki, Masaki Imai, Mutsumi Ito, Hiroaki Shime, Mizuyu Odanaka, Moe Okuda, Yoshihiro Kawaoka and *Sayuri Yamazaki (*Corresponding author) PLOS pathogens. 2021年12月 doi; 10.1371/journal.ppat.1010085. [査読有り] |
期待される効果、今後の展望 | 獲得免疫の誘導には樹状細胞の成熟が必須です。この樹状細胞の成熟を導くにはアジュバントが必要であると考えられていました。今回の私たちの研究では、アジュバントが無くても、制御性T細胞の一過性の除去で獲得免疫が誘導できることがわかりました。これは、基礎免疫学の基本となる学術的知見といえます。また、新型コロナウイルスによるパンデミックの終焉のためには、獲得免疫の誘導法や増強法の開発の必要性が高まっています。本研究成果は新規獲得免疫誘導法および増強法として使えるかもしれません。既存のワクチンとの併用など、制御性T細胞を利用した新たな免疫誘導法の可能性があり、社会的にも意義が高いと考えられます。 |
所属 | 医学研究科 |
氏名 | 山崎 小百合 |
専門分野 | 免疫学 |