グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



SDGs活動紹介

ホーム >  SDGs活動紹介 >  淡水・沿岸魚類の系統地理構造に基づくインドネシア島嶼域の生物地理区境界線の検証

淡水・沿岸魚類の系統地理構造に基づくインドネシア島嶼域の生物地理区境界線の検証



研究開始時の研究の概要  名古屋市立大学生物多様性研究センターの熊澤教授(理学研究科)が代表となって進めている本研究では、ワラセアと呼ばれる動物相の遷移帯を中心に、インドネシア島嶼域の淡水魚と汽水・沿岸魚を野外採集し、分類学的検討を行うとともに、最新の分子的アプローチを用いた系統・集団解析を行う。その結果に基づき、塩水中の分散特性が異なる魚類の種(集団)分布や系統地理構造を古環境学的背景と関連づけて理解し、生物地理区境界線との関わりを高精度に検証する。インドネシア島嶼域では、近年の環境破壊で生態系の持続性に深刻な懸念が持たれている。本研究は、生物地理学を格段に発展させるのみならず、東南アジア諸国で生物多様性の保全と生物資源の持続的利用を図るうえで必要な研究人材とそのネットワークを育てることに繋がる。
研究実績の概要  2022年度の前半は新型コロナウイルス感染症の影響で、日本側研究者がインドネシアを訪問して現地調査を実施することが難しかった。そこでインドネシアおよびタイの研究協力者による魚類サンプル採集を複数回実施した。インドネシアでは、2022年の6月から8月に主にスマトラ島の広範な地点で、2023年の1月から3月にジャワ島・スマトラ島などいくつかの島でサンプリングを実施した。また、3月には研究協力者のMr. Kholil(研究代表者の研究室に所属する国費留学生)がボルネオ島に行き、サンプリングを行った。大小河川の河口域や湖沼を中心に、ハゼ目のオクスデルクス科などの科を構成する約20種の淡水・汽水魚類標本を採集できた。また、スズキ目の様々な科に属する約15種を中心とした沿岸魚類の標本も収集できた。採集されたサンプルがカバーする魚種数は前年度より少ないが、これは研究する対象魚を絞り込んでサンプリングを行ったためである。
 これらの標本の一部は、インドネシア政府またはタイ政府の許可を得て、研究代表者の研究室に提供され、国際共同研究体制のもとで系統分類学的研究を行なった。組織標本については、そこからDNAデータを抽出して、ミトコンドリアDNAにコードされるシトクロムオキシダーゼサブユニットI遺伝子の塩基配列を決定し、分子系統解析を実施した。ホルマリン固定された体標本については、形態学的な分析を行い、現行の分類学的情報による種同定と分子情報に基づく系統関係の対比を行った。ハゼ目オクスデルクス科やスズキ目ツバメコノシロ科などの分類群において、従来の分類学的研究では認識されていなかった新種の存在が示唆されており、それについて詳しく分子系統学的・形態学的解析を行った。
 本研究課題の国際共同研究チームのメンバー間で研究成果を共有するために、zoomを利用した科学セミナーを7月と12月に公開で実施した。
研究代表 名古屋市立大学生物多様性研究センター 熊澤 慶伯(理学研究科)
研究期間 2019年度から2024年度
関連URL
  • 淡水・沿岸魚類の系統地理構造に基づくインドネシア島嶼域の生物地理区境界線の検証
  • 名古屋市立大学生物多様性研究センター