名古屋市立大学の歴史

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編集後記

 大学史を編纂し、資料室を作るように仰せつかったのは平成30年(2018)のことだった。大学の歴史をきちんと書くのはかなりのエネルギーと時間を使う作業になるだろう。それは知っていた。これを引き受けたら忙しくなるなあと逡巡する気持ちもあった。けれど、熟慮の末、長く御世話になった名古屋市立大学への恩返しのつもりでお引受けさせていただくことにした。やるからにはいいものを作りたい。
 大学の歴史を書くにしても、資料室を立ち上げるにしても、その基礎になるのは資料の収集である。そう考えて、卒業生、修了生の皆様や名誉教授の先生方などに、御自宅に残る資料の寄贈もしくは貸与をお願いすることにした。あわせて学内に残る資料の調査、探索を行なった。幸い、各方面から多くの寄贈の品々が寄せられ、卒業生たちの熱い思いに感激した。また、学内のあちらこちらに分散的に貴重な資料が残っていることを確認することができた。それらを調べるのは楽しい作業だった。
 そうした中、大学史の編纂が中盤を過ぎた令和2年(2020)になって、予想外の貴重な資料群に出会い、驚愕した。それらは本部棟の倉庫にひっそりと眠っていた。これについては、コラム「大学史の重要資料」をご参照願いたい。令和2年は調査の年になった。新型コロナウイルス感染症の流行によって講義が遠隔となり、慣れない遠隔授業の準備に明け暮れながら、本部棟の倉庫に通い、資料を読み、調書を取り、レプリカ作成のための写真撮影などを行なった。
 同年10月、山の畑キャンパス学生会館のリフォームが完了し、その2階に大学史資料館を開館することができた。「名古屋市立大学の沿革」のコーナーには発見した資料を、「学生生活の歩み」のコーナーには寄贈された品々を展示することができた。
 そうした成果に立脚して、ここに『名古屋市立大学開学70年史』をお届けすることができるのは大きな喜びである。本史の作成にあたっては、開学70周年記念事業実行委員会の記念誌部会の委員の方々から貴重な御意見、御高配を頂戴することができた。また、各部局から選出された記念誌編纂部会の委員の先生方には、各部局の原稿の執筆、とりまとめ、同窓会の方々との打ち合わせをはじめとしてひとかたならぬご尽力をいただいた。教務企画室の事務職員の方々からは熱意溢れる取り組みによって大変丁寧な記念誌作りをしていただいた。これらの方々にあらためて心より御礼申しあげる次第である。
 在学生、卒業生、修了生、教職員をはじめとして、名古屋市立大学に関わる者たちが自分たちの大学の歴史を認識し、共有することはとても重要なことだと考える。これによって、本学の長所・短所を含めた個性を知り、愛校心が醸成されていくと考える。本史は正媒体をweb公開で発信し、副媒体として冊子体を若干部数作成している。Web媒体は誰からも簡単に見られるようにした。多くの方々にお読みいただければ幸いである。

令和2年(2020)12月
人間文化研究科教授 副学長(大学史編纂・資料室)
 吉田 一彦