名古屋市立大学の歴史

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第Ⅵ章 看護学部の成立

3. 名古屋市立大学看護短期大学部の時代

(1)看護短期大学部の設置

 昭和62年(1987)、本学看護学校と名古屋市立看護専門学校の二校を統合し、新たに看護短期大学部の設置が決定された。第Ⅵ章「2.名古屋市立大学看護学校の時代」で述べたように、看護学校を短期大学部へ移行させることは、学校関係者の昭和40年代以来の念願であり、それがようやく叶ったのである。
 看護短期大学部の設置理由については、『名古屋市立大学看護短期大学部設置認可申請書』(昭和62年6月)に、次のように述べられている。

  1. 基本計画による位置づけ
     設置の趣旨で述べたような状況の中で、新たな医療需要に対処する施策を始めとして、名古屋市では、昭和55年度に「名古屋市基本計画」を策定し、その実施計画として昭和61年7月、短期計画(三ヵ年)を定め、諸施策を推進することとしており、その中の重点施策として、名古屋市立大学短期大学部の設置を定めているものである。
  2. 高齢化社会への対応
     高齢化社会を迎えて、「健康」は、その重要性を益々高めており、高齢化人口の急増に伴う安心して療養できる医療体制づくりと機能回復訓練などの医療需要への対応が急務である。
  3. 多様な医療需要への対応
     障害者医療、難病医療並びにリハビリテーション医療など多様な医療需要に対応するため、プライマリケアから高度専門医療に至る医療機能のネットワーク化を進める必要がある。こうした中で、名古屋市では、市立大学病院を高度先進医療機関として、また、市立の5病院は地域の中核的な高度専門医療機関として位置づけ、特色ある整備を進めることとしている。
  4. まとめ
     上記(1)~(3)に掲げる状況の中で、将来への対応として、この地域において必要とされる医療従事者、特に資質の高い看護婦の養成が急務とされているが、一方では、現在この附近における看護学科を有する大学及び短期大学にその人材を依存するとしても、ごく限られた需要しか満たすことができない状況となっている。従って、名古屋市では、現在ある名古屋市立大学看護学校、名古屋市立看護専門学校の二校を統合して、新たに名古屋市立大学看護短期大学部を設置することにより、このような社会的要請に応えようとするものである。

 看護短期大学部は、高齢化社会や多様な医療需要に対応した医療体制に必要な人材を要請する教育機関として設置されたのであり、その設置は、「名古屋市基本計画」(昭和55年度策定)の重要施策の一つに位置付けられた、名古屋市にとっても重要なものであった。また、看護短期大学部の設置によって、名古屋市の看護学校体制は、従来の名古屋市立大学看護学校・名古屋市立中央看護専門学校・名古屋市立看護専門学校の三校体制から、名古屋市立大学看護短期大学部・名古屋市立中央看護専門学校の二校体制に再編されたことも指摘しておきたい。
 昭和63年(1988)4月、名古屋市立大学看護短期大学部看護学科が開設された。学生定員100名、修業年限3年、専任教員28名(教授6名、助教授4名、講師6名、助手12名)でのスタートであった。看護短期大学部の教育理念は、「看護に関する高度な専門的知識及び技術を教授研究し、豊かな教養及び人格を備え、社会の保健医療の向上に寄与し得る人材を育成すること」(「学則」第1条)であり、これに基づき、「学生が人間尊重の理念に基づく看護の役割を認識し、高度な専門的知識および技術に支えられた看護を実践し、将来社会に貢献することができるように育成すること」が教育目標として定められた。
 なお、看護短期大学部の時代は、全国的に看護教育が見直された時期にあたり、本学でも二度のカリキュラム改正が行われた。

(2)専攻科助産学専攻の設置

 平成3年(1991)4月、核家族化の進展や複雑・専門化した医療環境の中で、高度な助産活動に対応できる人材を養成するため、看護短期大学部看護学科の上に、専攻科助産学専攻(以下、専攻科)が新たに設置された(『名古屋市立大学看護短期大学部指定申請書』平成2年9月)。入学定員15名、修学年限1年で、専任教員3名(教授1名、講師1名、助手1名)であり、平成6年(1994)4月に、専攻科は学位授与機構の認定を受けた。専攻科への進学者のほとんどは、看護学部、看護短期大学部からのストレート進学者であった。

(3)看護学部開設への動き

 平成5年(1995)12月、全国的な看護学の大学教育化の流れの中で、看護短期大学部の将来構想検討小委員会において「医療の高度化、疾病構造の複雑な変化、患者の教育レベルの向上等に対応できる高度な専門職としての看護婦を養成するために、四年制大学とする必要がある」という答申が行われた。これにより、看護学部設置に向けた調査・検討がはじまり、平成6年(1994)4月に、四年制大学化検討小委員会が設置された。
 その後、平成7年(1995)7月策定の「第3次名古屋市推進計画」において、看護短期大学部の四年制化が名古屋市政の重要な課題として位置づけられ、同8年(1996)4月には看護学部(仮称)設立準備委員会が設置された。こうして、看護学部の設置に向けた動きが大きく前進していった。その結果、平成10年(1998)6月、看護学部設置認可申請が提出され、同年12月に認可が下り、翌11年(1999)4月、名古屋市立大学の第6番目の学部として、看護学部が開設されたのである。
 看護学部の設置によって、看護短期大学部は発展的に閉校することになった。平成13年(2001)3月、看護学科の最後の学生が、同14年(2002)3月に専攻科の最後の学生が卒業し、看護短期大学部は14年の歴史に幕を閉じたのである。
 なお、『名古屋市立大学看護学部設置申請書』「設置の趣旨」の「沿革と現状」には、

 最近は、女子の高学歴志向を反映して、四年制大学への入学志望を理由に、当短期大学部への入学を辞退する者が増加する傾向がある。また、当短期大学部の卒業生のうち、保健婦や助産婦の資格または学士号の取得を求めて、保健婦学校や助産婦学校へ進学する者や看護系大学へ編入学する者がここ5年、2割程度を占めている。

とあり、看護短期大学部への入学辞退者や、他学校、他大学への編入者の増加傾向を特筆している。こうした学生数の減少も、看護短期大学部を四年制化する要因の一つであった。

参考文献
名古屋市立大学看護学校編『名古屋市立大学看護学校閉学記念誌』1990年
看護学部研究紀要委員会「名古屋市立大学看護短期大学部14年の記録」『名古屋市立大学看護学部紀要』3、2003年
「看護学部・看護学研究科のあゆみ(沿革)」大学院看護学研究科・看護学部オリジナルサイト(https://www.nagoya-cu.ac.jp/nurse/guide/history/index.html