学部・研究科・附属病院の歴史

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経済学部・経済学研究科

経済学部・経済学研究科の現在

現在を支える組織―代表教員による紹介

1. 経済学部の教育組織

 現在、名古屋市立大学経済学部は各学年の学生定員を230人とし、公共政策学科・マネジメントシステム学科・会計ファイナンス学科の3学科体制となっています。これら3学科の位置づけや教育内容・教育方針について、各学科長が紹介します。

経済学部の教育組織

出典:経済学部ホームページ「学部案内・経済学部の概要」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/faculty/guidance1


(1) 公共政策学科


公共政策学科の教育と人材育成

(公共政策学科長:中山徳良)

 公共政策学科は、経済学部は平成19年(2007)4月から定員を200人から230人に拡大したときに設置されました。それまで経済学部は「経済学科」と「経営学科」の2学科体制でしたが、「公共政策学科」・「マネジメントシステム学科」・「会計ファイナンス学科」の3学科体制に移行しました。そのときから今日まで「公共政策学科」の定員は90名であり、3学科のうち最も大きな学科となっています。
 公共政策学科は経済学を学ぶ学科です。経済主体(家計、企業、政府)の行動原理を科学的に解明し、よりよい社会のあり方を議論する手立てを身につけます。それにより身の回りのできごとや政治経済さらには文化・芸能ニュースまでもが、経済学という1つの枠組みを通して捉え直すことができます。また、国や自治体による政策の評価や今後の政策の在り方を考える実践的な学科でもあります。国や自治体がどのような制度を作り、どのような政策を行うのかは、今後の社会や経済の動きを考えていくうえで重要なことです。また、企業にとっても国や自治体の政策が経済に与える影響を分析・評価することは経営方針や経営戦略を立てるために不可欠なことです。
 そのために、公共経済学科のカリキュラムの編成は以下のようになっています。1年次では、「学部共通科目」を設置し、経済学、経営学、会計学、ファイナンスの入門科目を学べるようにしています。これは、2年次以降に配置している公共政策学科の専門科目の学修の準備をするためです。また、「基礎演習I」を配置して、情報の収集と整理・読解・作文・プレゼンテーションなどの大学での学修のための導入教育を行っています。2年次では、「学科基礎科目」を配置し、そこでは財政、金融、国際経済学などの公共政策の基本的分野について学ぶとともに、隣接分野の基礎的な科目を学びます。また、「基礎演習II」を配置し、「基礎演習I」を踏まえた専門教育のための導入教育を行います。3~4年次では、「学科応用展開科目」を配置しており、そこでは特定の分野における経済事象・政策効果の分析を行なう科目を幅広く用意しています。また、「演習I」から「演習IV」において、経済・経営・会計の特定分野について深く学び、卒業研究の遂行、卒業論文の執筆などにより、現実の経済や行政の政策課題、企業の経営課題などに取り組みます。
 公共政策学科では、幅広く深い教養と豊かな人間性を身に付け、経済学と経営学の諸理論に精通し、経済・経営上の諸問題に柔軟かつ的確に対応できるような地域の経済・経営を支える人材を養成するという経済学部の教育上の目的に鑑み、以下の4つの能力を有すると認められた者に対し、卒業を認定し、学士(経済学)の学位を授与しています。1つめは、知識・理解です。これはミクロ経済学、マクロ経済学などの基礎的な知識を修得し、それを用いて財政、金融、国際経済の分野を理解することができること、さまざまな応用分野について広く学ぶことにより、グローバル化が進む中での地域社会の課題を分析することができることです。2つめは汎用的技能です。これは社会の課題について、市場経済の働きを十分理解した上で、自ら分析・検討できる能力を身につけることです。3つめは態度・志向性です。これは自ら課題を発見し、解決しようとする行動ができること、地域社会の発展のために貢献できることです。4つめは統合的な学修経験と創造的思考力であり、経済学だけではなく、経営学、会計学、ファイナンスなどの隣接分野を広く学修することにより、総合的に課題を解決できることです。
 公共政策学科は、こうした方法論としての経済学の習得を軸とした、幅広い視野と教養を備えた人材を育成しています。特に市場経済の動きを理解した上で、国や自治体の政策を評価できたり、企業の経営方針を立案できたりする人材の育成をしています。卒業生は、金融や製造業・サービス業などの民間企業、公務員、研究者あるいは非営利団体組織(NPO)など幅広い分野で活躍しています。

経済学部ホームぺージ「公共政策学科」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/faculty/guidance1/publicpolicy

 

(2) マネジメントシステム学科


マネジメントシステム学科 10年の変容

(マネジメントシステム学科長:鵜飼宏成)

 マネジメントシステム学科では、様々な組織のマネジメントの仕組みについて、経営学および制度・歴史の2つの視点から学びます。経営学分野では、組織の編成、新事業創造、マーケティング戦略の構築、人的資源に関するマネジメントの仕組みなどが学べるカリキュラムが用意されています。また、制度・歴史分野では、企業とそれを取り巻く地域社会、国家、国際社会の仕組みについて制度的・歴史的な視点から学べるカリキュラムとなっています。
 1年次では、経済学の基礎(入門経済学)、経営学・会計学の基礎(入門経営学、入門会計学、入門ファイナンス)を学びます。
 2年次では、経営学分野と制度・歴史分野に関する基礎科目を学びます。基礎科目は、経営学分野に経営組織、経営戦略、企業論、マーケティング、人的資源管理などがあり、制度・歴史分野に制度経済学、経済史などがあります。また、データ分析基礎などを通じて、統計やプレゼンテーションの方法も学びます。
 3、4年次では、より高度な専門性を身につけるため、幅広い応用展開科目の中から、各自の問題意識に合った専門科目を学びます。同時に少人数の演習(ゼミ)、経営・経済現象の体験的な学習機会としての企業経営の事例分析、経営者が経営体験を語る産学連携講座などもあります。
 この10年は、「『重』高齢化社会の到来」「SDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」・「AI・IoT」・「Society5.0」等のキーワードに代表される急激な社会環境変化が生じた時代でした。これらの変化は、パラダイムシフトやイノベーションの担い手として企業に機会をもたらし、他方では自ら行動変容できない企業に退出を促しました。おのずと、労働市場の流動性が高くなり、学歴ではなく、ワークシフトを促す学習歴が重視されるようになりました。
 このような時代背景から、産業界や政府は、大卒新入社員に「人生100年時代の社会人基礎力(新・社会人基礎力)」を求めるように変化してきました(平成3年(2018))。新・社会人基礎力とは、「これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力」と定義されます。すなわち、社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ(平成18年(2006)発表)、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的(どう活躍するか)、学び(何を学ぶか)、組合せ(どのように学ぶか)のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要とされました。3つの能力/12の能力要素とは、前に踏み出す力(主体性、働きかけ力、実行力)、考え抜く力(課題発見力、計画力、創造力)、チームで働く力(発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力)を指します。
 マネジメントシステム学科は、急激な社会の変化の中で、これまでの経営や経済の理論を踏まえつつ、複雑化する組織を統合的に捉える教育に努めてまいりました。近年では、地域レベルから経済・経営の課題を見つけ、解決に導くリーダーの育成を目的とし、体験型学習(事例研究・産学連携教育)を積極的に導入してアントレプレナーシップ(起業家活動)や国際感覚の醸成を強化しています。更なる時代的・社会的要請に応えるために、これからも学び方を改革し、社会や経済の制度・歴史に精通し、企業の経営をより深く理解できる人材の育成を目指します。

経済学部ホームぺージ「マネジメントシステム学科」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/faculty/guidance1/management

 

(3) 会計ファイナンス学科


企業活動を資金面から分析できる高度職業人の育成

(会計ファイナンス学科長:奥田真也)

 会計ファイナンス学科は、2007年度に3学科制に移行した際に設置された学科で、学生定員は一学年60名となっております。これに対して主に会計関連科目を担当する3名とファイナンス・情報関連科目を担当する7名の教員がこの学科の教育を担っています。
 この学科では、企業の活動を資金面から考えることを学びます。世界共通の会計ルールの導入を始めとして大きな制度改革が行われ、それは現在も進行中です。また、企業の資金調達方法は銀行の借り入れから市場における資金調達へと大きく変化し、さらにM&A(合併・買収)、研究開発投資などが増えています。このような企業の活動を幅広く分析できる会計やファイナンスの専門知識の習得が不可欠になってきています。
 企業が行う財務的な意思決定の方法を学ぶのが「ファイナンス」であり、企業の財務的状況を企業の内外に報告するのが「会計」です。会計ファイナンス学科では、会計、ファイナンス、金融工学などの科目と、それらと関連する統計的・数量的方法および情報処理手法の科目を学ぶことにより、会計・ファイナンスの専門家や企業の経理・財務部門を担当できる高度な職業人の養成を目指しています。
 このような目的を達成するため、次のようなカリキュラムが組まれています。まず1年次は学科に分かれていませんが、入門会計学、入門ファイナンスの授業が設置され、会計・ファイナンス学科を学ぶための基本的知識を身に着けてもらっています。
 2年次では、会計分野とファイナンス分野に関する基礎科目を学習します。基礎科目は財務会計、管理会計、財務分析、企業ファイナンス、先物・オプション入門などがあります。
 3、4年次では、より高度な専門的知識を学ぶため、幅広い応用展開科目の中から、自分の問題意識に合った専門科目を選択します。こうした科目として、応用財務分析、税務会計、コーポレートガバナンス、ファイナンス分析、財務情報処理、経営情報学、オペレーションズ・リサーチなど多数あります。さらに10名弱の少人数による演習があり、ゼミナール形式による教育が行われています。また、公認会計士やフィナンシャルプランナー等の資格取得を支援する体制も整っています。

経済学部ホームぺージ「会計ファイナンス学科」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/faculty/guidance1/finance

2. 経済学研究科の教育組織

 現在(令和2(2020)年度)、名古屋市立大学大学院経済学研究科は経済学専攻と経営学専攻の2専攻を設置しており、両専攻を合わせて博士前期課程40人、博士後期課程10人を定員としています。また、特色ある教育として、「医療経済マネジメントコース」・「経営者コース」・「都市政策コース」を提供しています。これら2専攻および3コースの位置づけや教育内容・教育方針について、各学科長、コース長が紹介します。

経済学研究科の教育組織

出典:経済学部ホームぺージ「研究科案内」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/graduate/guidance2



専攻
(1) 経済学専攻


幅広い視野と高度な専門性をもつ経済学研究者の育成に向けて

(経済学専攻長:森田雄一)

 本研究科の基本的な理念は、経済学や経営学に関する広範で豊かな知識や教養を備えた社会人ならびに高度な専門知識を有する研究者の養成に努め、経済・経営上の諸問題に柔軟かつ的確に対応できる高度な専門性を持つ人材を社会に送り出すことです。これはアドミッションポリシーにも謳われているとおりですが、経済学専攻はこの理念のうち主に経済学にかかわる部分を担っています。
 本研究科は平成元年(1989)に全国初の社会人大学院が設置されて以来、修士の学位の授与についていえば一般学生よりも社会人のほうが多数を占めてきました。これまでは一般学生の在籍する専攻と社会人の在籍する専攻とに分けられていましたが、両者の交わりの中から新たな学問的要素が生まれてくることに注目し、学問的な性質により現在の専攻に分けられて今日に至ります。
 現在われわれを取り巻く経済および社会環境の変化は極めてそのスピードが速いという特徴があります。少子高齢化やグローバル化を背景としながら、震災や自然災害からの復興、累増した財政赤字への取り組み、予想される産業構造の大きな転換、待ったなしとなりつつある環境問題への対応など様々な難問がわれわれの前に横たわっており、これらの諸問題に対して、経済学の考え方に基づく分析方法を用いた多面的なアプローチによる検討が求められています。
 こうした時代的要請に対応するため、経済学専攻はミクロ・マクロ経済学の理論的発展を目指す「経済理論系」、財政金融政策に関わる実践的問題を取り扱う「経済政策I系」、国際経済政策・産業政策、社会保障政策などの望ましいあり方を探る「経済政策II系」、経済システムの多様性と変化を追究する「制度・歴史系」の4つの系から成り立っています。これら4つの系の存在により多様な見地から幅広い考察がもたらされ、深い専門性に基づく問題の顕在化が可能となっています。
 経済学専攻の今後の展望についていえば、現在の政策決定の現場ではEBPM(Evidence-Based Policy Making)の考え方が注目されます。欧米で先行しているEBPMとは、「証拠に基づく政策立案」と言われ、客観的な証拠(エビデンス)を活用しながら、効果のある政策、効率的な政策の実施を目指す取り組みです。  社会の変化のスピードが速い中で、限られた資源を活用しながら適切な政策運営を行っていくためには、政策立案の前提となる事実認識、立案される政策とその効果を結びつけるロジック、政策実施にともなうコストと効果の関係が明らかにされることが重要になります。こうしたEBPMの必要性はまさに本専攻における4つの系の存在意義に合致しています。経済システムの多様性の中における事実の把握、課題抽出を行い、理論的な観点から政策の意義をとらえ、政策効果の予測、評価を行うというEBPMに関するサイクルを4つの系の中に見て取ることができるのであり、本専攻にはその人材育成が期待されているものと考えられます。

経済学部ホームぺージ「経済学専攻カリキュラム表」 
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/graduate/major/economics

 

(2) 経営学専攻

企業経営の専門知識に基づく実践的アプローチ

(経営学専攻長:河合篤男)

 大学院経済学研究科・修士課程が1968年に設置された当初は、経済政策専攻のみで構成される1専攻制でしたが、実業界から経済と経営に関わる高度な専門知識を有する人材の供給を求められるようになったことで、1989年には社会人を対象とする修士課程が設置され、「日本経済・経営専攻」と呼ばれるようになりました。この日本経済・経営専攻が、現在の経営学専攻の原型です。この専攻では昼夜開講制がとられ、多くの志願者を集めました。大学院重点化を機に、平成17年(2005)には社会人大学院が博士前期課程に集約され、、日本経済・経営専攻と経済政策分析専攻とに再編されました。平成20年(2008)に経済学専攻と経営学専攻に再編され、現在に至っています。

●現況
 経営学専攻は設立(起源)以来、一貫して企業活動にかかわる諸問題に対して、高度な専門的知見を提供することを主眼として、研究・教育を行ってきました中期目標にある「高度な知識を持つ専門的社会人」の育成が重要な目標となっています。
 とくに近年、グローバル化の進展に伴い、国際ルールと市場環境を鑑みながら、企業活動を行うことが求められています。その課題に的確に応えるべく、経営学専攻は3つの系――経営系、会計系、ファイナンス・情報系――から構成されています。経営系は、企業の戦略立案や人のマネジメントなど、多様な経営問題を扱っています。会計系は、会計情報の分析をもとに、企業経営の計画と管理、またその影響について考えています。ファンナンス・情報系は、計量的な手法を駆使して、企業の財務戦略、経営戦略や事業システムの構築に照射しています。これら3つの系は、それぞれ独立した専門分野でありながらも、相互に密接な関係性を保っています学際的なアプローチによって、より現実の経営問題に有効な知見を得ることを目指しているのです。

●教育
 実践を重んずる経営学専攻では、企業経営に係るさまざまなデータや事例を取り上げて分析しています。その能力を高めるために、課題解決型授業やグループ・ディスカッションの形式も教育現場に取り入れており、とりわけ演習においては、学生が自身の研究成果について主体的にプレゼンテーションを行い、教員との間で活発な議論が生まれています。実践性と同時に、高度にアカデミックな議論が展開されることも経営学専攻の特徴です。
 また近年、専攻や系を超えたクロス・ファンクショナルなアプローチを探究すべく、2つの「コース」も併設されました。それが医療経済マネジメントコースと経営者コースです。医療経済マネジメントコースは、医療従事者や医療機関の経営者が抱える課題に、経済学と経営学の双方向からのアプローチで知見を得ようとしています。一方の経営者コースでは、経営学の視点と制度・歴史研究の始点を融合して、経営者として持つべき資質を解き明かし、その鍛錬を目指しています。

経済学部ホームぺージ「経営学専攻カリキュラム表」
 https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/graduate/major/mba

 

コース
(1) 医療経済マネジメントコース


医療と経済の「職業実践力プログラム」

(医療経済マネジメントコース長:澤野孝一朗)

 医療経済マネジメントコースは、2年間で医療と経済・経営の2つの分野にわたり研究教育を行うコースです。経済学研究科、医学研究科および薬学研究科の協力を得て、2016年4月に、日本で初めて開設されました。コースは、経済系と医療系の両分野が履修可能であり、研究課題(リサーチペーパー)で修士号を取得することができます。入学試験は、研究計画書と面接で合格を決定します。コース所属教員による専門的指導を受けます。2020年4月現在、コース所属教員は経済学専攻が3名、経営学専攻が3名です。学生の募集人員は、当初5名でしたが、現在は8名です。
 超高齢化社会の現在、国の累積赤字と国民医療費は年々増え続け、病院経営は今後一層厳しい状況になっていくことが予想されます。医療機関が質の高い医療を提供するためには、病院経営が安定し、堅固な財政基盤を築くことが必要です。そのためには、医療機関において医療経済や病院経営に明るい人材が必要不可欠であり、そうした人材育成が社会的にも求められています。このことを背景に、本コースは開設されました。
 本コースの開設は、名古屋市立大学が取り組んでいる「開学65周年記念事業」の一つであり、未来に向けてさらなる展開を目指す事業として位置づけています。また文部科学大臣による「職業実践力プログラム」の認定を受けており、ディスカッションに対し積極的な姿勢を期待するなど、その規定に従った教育プログラムを実施しています。
 コースでは、講義と演習の履修に加え、1年次に「研究成果報告会」、2年次に「修了審査報告会」での報告が全員に義務づけられています。「研究成果報告会」では、1年次の研究の中間報告もしくは進捗状況を報告します。「修了審査報告会」では、研究課題(リサーチペーパー)の研究報告を行います。関連分野の学術的な研究を行いたい場合、修士論文を作成することもできます。
 このコースは、医療関係機関などに働きながら修士号を取得できる社会人大学院です。演習を含めて、ほとんどの講義課目は夜間または土曜日に開講し、2年間で無理なく講義科目が履修できます。仕事や家事・介護のため、通常の2年間での修了が困難な方のために長期履修制度があります。希望者は、入学時もしくは2年進級時に所定の手続きにしたがって長期履修を申告し、それが認められれば、2年間分の学費で3年間在籍できます(2020年4月現在)。
 所属する大学院生は、病院等の医療機関、企業、官公庁、教育・研究機関等で3年以上の就業経験を有し、かつ25歳以上の人です。職業は医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士、病院職員、税理士など、非常に多岐に渡ります。臨床の現場に立ちながら、学ぶ大学院生が多いのも特徴です。

過去、修了された方の研究テーマは、以下のとおりです。

平成31年(2019)度(修了者:5名)

  • 看護師の勤務先種別から考える「仕事意欲」への影響要因――高齢者施設で働く看護師を対象としたアンケート調査の分析結果から
  • 病床利用率の病棟間格差の緩和に向けた検討
  • 大学病院の業績に与える経営指標に関する分析
  • 民間病院グループの経営戦略に関する一考察(事例研究)
  • 女性歯科衛生士の就業継続――キャリアと専門性に着目して


平成30年(2018)度(修了者:4名)

  • 医師勤務環境改善による過重労働軽減と経営に及ぼす影響――公的総合病院での実践事例
  • 看護師の限界生産力と賃金との乖離
  • 愛知県の中小医療法人の事業内容と財務状況――ケアミックス病院の分析
  • 在宅訪問栄養食事指導の在り方に関する一考察

平成29年(2017)度(修了者:4名)

  • Ⅱ型糖尿病患者数の将来予測
  • 看護師が働き続けられる組織体制の一考察――キャリア・アンカーを用いた潜在看護師の実態調査から
  • 診療報酬制度における検査内容と臨床検査部収支の分析
  • 医療機器に係る安全性リスク分析とそのマネジメント

 これらの研究をもとにして、修了生は学会報告を行い、学術論文を公刊しています。将来的に博士号を取得することを検討している、そういう声を聞くことも多々あります。

経済学部ホームぺージ「医療経済マネジメントコース」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/graduate/memc

 

(2) 経営者コース


経営者コースの開設にあたって

(経営者コース長:出口将人)

 このたび、経済学研究科の新しいコースとして「経営者コース」がスタートしました。この4月に第1期生を迎えたばかりですので、ここではコースの紹介がてら、設立の背景と目的、求める学生像、カリキュラムの特徴などについて簡単にご説明させていただきます。

●設立の背景と目的
 経済学研究科では、平成2年(1990)に日本で初めて社会人大学院を設立して以来、30年間にわたって企業、官公庁などに勤務されている社会人の方々を対象に経済学、経営学にかんする大学院教育をおこなってきました。そのなかには企業やNPOをはじめとするさまざまな組織の経営者が含まれており、教育指導の過程において、そうした人々の実体験にもとづく叡智のようなものに触れる機会が少なくありませんでした。そうした機会を発展させ、経営者のもつ叡智を本研究化のスタッフのもつ学術的な知識と融合させることで、理論的にも実践的にも実りが多く、広く社会に貢献しうる知見へと昇華させることを目的として、経営者コースを開設しました。長期的には、本コースでの研究成果を教材として学部・大学院の教育に利用すること、さらには本コースの修了者にそうした教育に参加してもらうことも視野に入れています。

●求める学生像
 経営者としての経験にもとづいた明確な問題意識をもちつつ、組織の「経営」とそれをとりまくより大きな社会経済の「制度と歴史」にかんする思考方法や分析手法を学び、自らの経験を体系的に清津、記述、発信することで、次世代経営人材の育成に貢献しようという意欲のある人。

●カリキュラムの特徴
 授業科目(コースワーク)と演習科目(ゼミ)の日本の柱から構成されますが、上述の目的にあわせて、通常のコースよりも演習科目の比重を重くしています。
 授業科目(コースワーク)では、組織のマネジメントにかんする高度な専門知識と経営人材に求められる教養を幅広く習得することを目的に、「経営系科目」、「制度歴史系科目」を中心にしたコースワークのカリキュラムを設定しています。
 演習科目(ゼミ)については、幅広い知見の習得と深さと多面性を備えた研究とを並行しておこなえるように。演習と特別演習を設定します。演習では、受講者の研究課題をより深く追求できるように研究指導をおこないます。特別演習では、より多くの教員とのディスカッションを通じて、経営者としての経験の記述にかんして多面的な見方を追求できるように促します。

経済学部ホームぺージ「経営者コース開設・案内チラシ」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/wp-content/uploads/2019/09/%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%85%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E9%96%8B%E8%A8%AD.pdf

 

(3) 都市政策コース


都市政策研究センター開所式(2018年5月1日)
都市政策研究センター開所式
(2018年5月1日)

 経済学研究科と人文社会研究科の連携により、都市政策コースが設立され、令和2年(2020)度から始まりました。名古屋市をはじめとする都市の諸課題の解決に向けて、基礎理論から実践的な研究まで、多様な学問分野の理解を目指します。
 また、本コースは都市政策研究センターとも連携しています。同センターは名古屋市立大学の附属施設として平成30(2018)年5月に開所しました。経済学研究科教員も参画しています。
 現在の都市政策コース長は人間文化研究科の小林直三教授です。本コースについては、人間文化研究科の該当ページをご覧ください。
 


都市政策コース 
https://www.nagoya-cu.ac.jp/human/urban-policy/index.html
都市教育研究センター 
https://cupre.ncu.nagoya/

都市政策研究センター開所式
(2018年5月1日)
都市政策研究センター開所式 (2018年5月1日)

3.経済学部・経済学研究科の附属組織

 名古屋市立大学経済学部・大学院経済学研究科には、附属組織として経済研究所と経済学会があります。これらの組織は本学部・研究科における共同研究プロジェクトや研究成果発表の中心的な場を提供することで、研究・教育を振興しています。所長と学会長が紹介します。


 

(1) 附属経済研究所


附属経済研究所の歴史と今後の抱負

(附属経済研究所長:岡野衛士)

 附属経済研究所の歴史は、名古屋市立大学の開学15周年記念事業の一環として「産業科学研究所構想」が打ち出された昭和39年(1964)8月にまで遡ることができます。その後、いずれも実現することはなかったものの、研究所を設立するという構想は「都市問題研究所構想」、「都市環境総合研究所構想」、「都市問題研究所構想」に引き継がれました。都市問題研究所の設立は「名古屋都市センター構想」との関係から保留されましたが、平成3年(1991)6月に「経済学部附属研究所構想」と名を変え、ようやく平成8年(1996)4月に附属経済研究所が設立される運びとなりました。
 こうした設立の経緯を反映してか、設立当時の研究課題は「大都市圏における土地問題と土地政策」でした。その後、本研究所の研究課題は多岐にわたるようになり、現在に至っています。
 本学70年の歴史において本研究所の歴史は24年ほどであり、必ずしも歴史や伝統を誇れるものではありません。しかし、本研究所のルーツが「産業科学研究所構想」にあるとすれば56年の歴史があり、経済学研究の重要性がその当時から認識されていたということは事実でしょう。この事実に鑑みて本研究所の意義をよく認識し、今後も本学における経済学研究の発展に貢献していきたいと考えています

経済学部ホームぺージ「附属経済研究所・経済学会」
https://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/graduate/facilities

 

経済学会


機関誌・DPの刊行と講演会・研究会の開催

(経済学会長:吉田和生)

 名古屋市立大学経済学会は経済学・経営学、ならびにこれらに関連する諸学科の発展に寄与することを目的として、経済学部創設と同時に昭和39年(1964)に設立されました。当該学会は経済学研究科教員、大学院生、経済学部学生、研究員および本学会の事業を賛助する者からなる会員によって構成され、機関誌『オイコノミカ』の発行をはじめ、ディスカッション・ペーパーの刊行、講演会・研究会の開催など、会員の研究活動支援を行っています。
 『オイコノミカ』は現在まで第56巻の印刷・発行を行っており、経済学・経営学の研究成果の蓄積・公表に役立っております。当該学術誌は査読制を導入しており、研究員、大学院生、および学生から投稿された研究論文、研究ノートについては、学会編集委員会によって任命された匿名審査員2名による査読結果に基づき、編集委員会が掲載の可否を決定します。査読制を導入することによって、研究水準の向上とともに博士学位の取得を推進する点で、一定の役割を果たしています。
 また、経済学会が刊行する「ディスカッション・ペーパー」は、特に経済学研究科教員の研究成果をいち早く公表して論文の改善を促し、海外トップジャーナルへの投稿につなげる役割を果たしています。

経済学会ホームぺージ「『オイコノミカ』・DP」
https://oikono.econ.nagoya-cu.ac.jp/