学部・研究科・附属病院の歴史
学部・研究科・附属病院の歴史
伝統薬物を科学する
生薬学は、生薬や漢方薬、天然由来医薬品の基となる天然資源を薬という観点から捉える総合科学です。
1.臨床生薬学・臨床漢方薬理学
生薬や天然素材は、漢方薬や機能性食品の原料として利用されていますが、その有用性に関するエビデンス、有効成分、作用機序、副作用や薬物相互作用など、多くの課題があります。また、バラツキが必須な天然素材を薬物として利用するためには、品質の確保が重要です。私たちはそれら課題を薬理学、薬物動態学、分析化学、天然物化学、情報科学、薬史学的な考証など多方面からアプローチし、研究成果を医薬品情報として現場へ提供しています。
2.植物・微生物由来有用二次代謝産物の生合成工学と天然物化学
植物や微生物由来の生理活性成分の多くは、生物体内において生合成される天然有機化合物であり、医薬品や機能性分子として応用されています。生物からは、今後も新たな医薬リードとなる未知の化合物が発見される可能性に満ち溢れており、私たちは有用天然物の探索とその生合成・蓄積機構を理解し物質生産へと展開する研究を行っています。
教授 牧野 利明
講師 寺坂 和祥
講師 ⽯内 勘⼀郞
免疫・炎症反応を理解し、疾患の治療へ
アレルゲンや病原体に対して、生体は免疫応答を変化させ的確に応答し、健康を維持しています。しかしながら、感染や生体内のストレスなどの多種多様な環境因子によって、免疫応答はその相互作用のバランスが崩れた場合、炎症が起こり、アレルギー、自己免疫疾患、癌などの慢性疾患になると考えられます。
私たちの研究室では免疫反応の方向性を規定する環境因子と炎症について、疾患モデルマウスによる解析から、さらに細胞内シグナル伝達経路などの分子機構まで明らかにしていきます。これにより難治性の慢性疾患の発症メカニズムを解明するだけではなく、環境因子や生体内共生菌など生体の健康と恒常性維持に貢献する菌体を用いて免疫システムを応用した慢性疾患の新しい予防法や治療法の開発を目指しています。
教授 肥⽥ 重明
准教授 伊藤 佐⽣智
RNA代謝研究を通して生命現象の謎を解明する
遺伝情報であるRNAの研究は、ヒトゲノム解読以降ますますその重要度を増しており、いまや分子生物学・生命科学の中心的位置を占めています。私達は平成19年(2007)に、mRNA分解開始機構を世界に先駆けて解明して以降、mRNAを標的とした様々な遺伝子発現調節のメカニズムを解明してきました。RNAの代謝、遺伝子発現はあらゆる生命現象において根本的に重要な役割を担っているため、細胞の分化・増殖や老化・がん化・アポトーシス、体内時計から学習・記憶といったさまざまな生命現象が研究の対象となります。
またこのような生命活動において必須なはたらきをする因子の多くは、疾患の原因因子としても多数同定されており、特にがん、プリオン病、脊髄小脳変性症、統合失調症などの疾患原因因子を扱うことで、病態形成のメカニズムの解明および疾患治療への応用につながる研究成果が期待されます。また、最近ではウイルスRNAや人工RNAの分解機構を新たに解明し、mRNA医薬安定化技術を開発することに成功しました。mRNA医薬を用いた癌免疫療法やiPS細胞の作製、ゲノム編集によるウイルス疾患治療への応用研究も進めています。
教授 星野 真⼀
講師 細⽥ 直
イオンチャネルを標的とした創薬
イオンチャネルは、あらゆる生物で普遍的に発現する機能性膜タンパク質であり、イオン輸送を介して、生体内環境の恒常性(ホメオスタシス)を維持しています。そのため、イオンチャネルの機能異常は疾患(チャネル病)の原因になります。ヒトゲノム中で薬の作用点となりうるイオンチャネルタンパク質が15%存在することから、イオンチャネルを標的とした新規治療薬の開発(創薬)が期待されています。
私たちは、イオンチャネルの生理機能や病態での機能変化の解析を、分子・細胞・組織・臓器・個体の多階層レベルで統合的に行っています。特に、生体機能発現に最も重要な細胞内Ca2+シグナルに関連したCa2+活性化イオンチャネルやCa2+透過性イオンチャネルに注目しています。Ca2+関連イオンチャネルの生理機能や循環器 系難病(肺高血圧症、門脈圧亢進症、肝 線維症など)との関連を探求し、イオン チャネル標的創薬を目指しています。
教授 ⼭村 寿男
講師 鈴⽊ 良明
肺高血圧症とCa2+関連イオンチャネル
脳の形成と機能を遺伝子レベルで探り、神経精神疾患に挑む
人間の脳は無数の神経細胞が整然と配置されネットワークを形成することで正しく機能します。よって、脳の形成におけるわずかな異常でも、精神神経疾患や発達障害の原因やリスクになります。しかし、これらのメカニズムにはまだわからないことが数多くあり、脳の疾患を理解・克服するための障害になっています。
我々は、脳の形成や機能における遺伝子の機能を解明し、様々な疾患に対する画期的治療法の開発につなげることを最終目的に研究を行っています。遺伝子変異マウスやヒトゲノム解析の研究から精神神経疾患や難読症(読字障害)に関わる遺伝子群が明らかになってきてはいますが、これらの具体的な機能の解明は遅れています。我々の研究室では、遺伝子改変技術、タンパク質解析技術、イメージング技術などを駆使し、「なぜ、単一の遺伝子のわずかな異常が精神神経疾患を引き起こすのか」という謎に挑んでいます
教授 服部 光治
講師 築地 仁美
講師 河野 孝夫