学部・研究科・附属病院の歴史
学部・研究科・附属病院の歴史
「いい手術をしましょう!」そのためのあらゆる努力をする。消化器外科学分野では、この合い言葉を念頭に諸先輩方がこれまでに築き上げてこられた教室の基盤を大切に、医局員全員が向上心をもって取り組んでいます。臨床面では、各種診療ガイドラインを踏まえつつも、日本の医療水準全体の向上に繋げるべく、全国に先駆けた一歩先の手術を安全かつ確実に施行することを心掛けています。“心”、“技術”に加え、恵まれた”設備”を最大限活用し、特に鏡視下手術に力を注いできました。食道癌は完全胸腔鏡・腹腔鏡視下で行い、胃全疾患に対してロボット手術をその対象としています。直腸癌においてもロボット手術を完全に軌道に乗せ、将来を睨んだ結腸癌へのロボット手術導入を進めています。肝胆膵領域では、腹腔鏡下高難度肝切除に加え、肝切除や膵切除をロボット手術の適応とし着実に段階を踏んできました。すべての領域で日本でも有数な症例数を安全にこなし、更なる高みを目指しています。研究面では、上部・下部・肝胆膵の3グループが切磋琢磨し、科学研究費補助金をはじめとした競争的獲得資金で結果を出しています、また日本臨床腫瘍研究グループ班会議に積極的に参加し、臨床研究を通して、医療の発展に貢献すべく各分野で努力しております。教育面も心を一つにして後進の育成に重きを置いています。Our Credoとして「心」「磨く」「繋ぐ」を掲げ、将来の消化器外科を担う若手の先生、医学生にその心と技術を継承すべき取り組みをしています。関連病院の先生方を中心としてVideo Clinicを定期開催し、医学生へはラボや縫合・エネルギーデバイス実習を通じて外科医の魅力を拡げるべく尽力しております。
腫瘍・免疫外科学分野では、患者の手術検体を用いた胸部悪性腫瘍に対するトランスレーショナルリサーチと低侵襲外科治療に関する臨床研究を行っています。
胸部悪性腫瘍の中で最も多い肺癌に対し、分子標的治療薬(EGFR TKI)の効果予測にEGFR mutation が深く関わっていることをDana-Farber Cancer Instituteとの共同研究で発表したことを皮切りに(Science 2004; 304: 1497-500)、その耐性機序の解明や新規発癌原因遺伝子の同定に関する研究を行い、個別化治療の確立にこれまで取り組んで参りました。また、肺癌治療に使用されるようになった免疫チェックポイント阻害剤の効果がPD-L1発現と相関することが判明したことから、その他の胸部悪性腫瘍(胸腺癌や悪性胸膜中皮腫)に対しても、同薬剤の効果についてPD-L1発現と臨床病理学的因子との検討を行っています。
一方、臨床研究では進行肺癌に対する胸腔鏡手術の安全性に関する研究を行い、隣接臓器浸潤を伴うほぼ全症例に胸腔鏡手術を安全に完遂でき、従来の開胸手術よりもQOLに優れ、同等以上のoncologic benefitも得られたことを立証しました。当分野のモットーである「低侵襲化」については医局員の皆が共有し、術中・術後合併症の低減やoncologic surgeryに関連した研究を続けています。
附属病院においては肺癌を中心に手術数は年々増加し、私が赴任するまで15-33%であった胸腔鏡手術は着任後1年目で96.2%、2年目96.4%、3年目97.2%、そして4年目にはロボット手術も含め、100%を達成しました。進行肺癌も対象に加えて内視鏡手術を完遂している病院は国内でも唯一と自負しています。さらに、看護部やリハビリテーション部と共同で患者QOLの向上や在院日数の低減にも励んでいます。
職場環境を最優先に、かつ「アカデミズムを効率よく追求する」ことをモットーに、いつも笑いの絶えない明るい研究室を形成しています。
(文責:中西 良一(主任教授))
腎・泌尿器科学分野は、昭和28年(1953年)に開講されました。先端医療の実践と開発、基礎研究による病態解明と臨床応用を通じ、泌尿器科学の進歩に貢献し、世界に発信できる教室を目指しています。そのために、「凌雲之志」のスローガンのもと、専門分野で一流となる人材の育成に力を注いでいます。
診療内容の多様化に対応しつつ、先端性を維持するためのサブスペシャリティとして内視鏡手術、泌尿器腫瘍、尿路結石症、排尿障害、生殖医療、先天性疾患の専門グループが組織されており、小児泌尿器科学分野とは密に連携して診療、専門医研修にあたっています。ロボット手術に関しては、保険適用となる前(2011年)から、それまでの腹腔鏡手術の経験を活かし、国内で先駆けて導入しました。これまでに前立腺癌、腎癌、膀胱癌、水腎症、膀胱尿管逆流に対し1,000例を超えるロボット手術を実施してきました。内視鏡手術、顕微鏡下手術も特色で、近隣大学からも紹介いただいています。先進医療としてのMRI融合前立腺針生検ほか、治験、特定臨床研究など、あらたな治療の開発にも取り組んでいます。その中では、泌尿器科疾患の発症のメカニズムを分子細胞学的に解明し、手術や治療薬の開発をめざしていることが特徴です。臨床検体のほか、培養細胞や動物実験などを用いた国内外の施設との共同研究を行い、成果を発表してきました。学内と関連施設における教室員の活躍は、米国・欧州を含む国内外で多くの受賞に浴しています。また本邦・海外における治療ガイドラインやマニュアルなどの作成にそれぞれの専門性を活かして参画しています。開学70周年を契機とする本学のさらなる発展に貢献できるよう努めてまいります。
心臓血管外科教室では新生児から成人の心臓・大血管の手術加療を中心とした臨床業務に日々取り組んでおります。また大学病院・総合大学である強みを生かした研究・教育にも注力しております。
臨床面では近隣病院との連携を深め、また病院の関係各所との連携を深めることで多数の重症例・緊急手術に対応しております。また新しい手術の安全な導入にも積極的に取り組んでおり、カテーテルで行う大動脈手術(胸部・腹部大動脈ステントグラフト内挿術)や弁膜症手術(経カテーテル大動脈弁置換術)、内視鏡を用いて小さな傷で心臓手術を行う低侵襲心臓外科手術(MICS)も開始し、近い将来ロボット手術や人工心臓を埋め込む手術も導入予定です。
研究面では「動脈硬化と脂肪の関係性の解明」「水素と動脈硬化・炎症との関連性の解明」についての基礎研究(愛知学院大学と共同)、3Dプリンティング・Virtual Reality (VR)技術を利用した心臓・大血管手術シミュレーションの研究(医療デザイン研究センター、関連企業と共同)、さらに「3D手術動作解析ソフトの開発」(慶應義塾大学と共同)で取り組んでおります。研究成果を社会実装することが次のステップです。
教育面では、医学生・大学院生の教育・外科医の育成に力を入れております。特に医学生には「”超”参加型実習」と銘打った積極的な手術参加を中心とした臨床実習を行っております。また大学院生・外科医の育成関しては、前述の臨床・研究セクションと有機的・効率的な連携を図っております。
今後も心臓血管外科分野において、名古屋市立大学・名古屋市立大学病院の特徴を活かした活動に積極的に挑戦します。
(文責:山田 敏之(医局長)
須田 久雄(教授))
名古屋市立大学外科乳腺グループには、第二外科および腫瘍・免疫外科での時代を通して40年ほどの歴史がありますが、2016年、名古屋市立大学大学院医学研究科乳腺外科学分野が新設され、新しいひとつの外科学教室として出発しました。名市大外科乳腺グループは、1980年初頭に、小林俊三先生(旧第二外科助教授)がその礎を築かれました。小林先生は、乳癌の臨床・研究において日本の先駆者のおひとりでありました。その小林先生の研究を、岩瀬弘敬先生(前 熊本大学教授)が、そのあと、山下啓子先生(現 北海道大学教授)が引き継がれました。
2016年から、遠山が本学乳腺外科学分野の教授として乳癌診療・研究のチーフを務めています。診療におきましては、患者さんに「最善かつ最良の医療を提供する」ための方策として、2016年に「乳がん診療・乳房再建センター」を設立しました。形成外科医や精神腫瘍医などと密接な連携をとることにより、質の高い乳癌診療が提供できるように心がけています。
乳癌に関するトランスレーショナル研究(TR)および臨床研究にも積極的に取り組んでいます。TRとしては主にエストロゲン受容体陽性乳癌のバイオロジーの関する研究を行っています。臨床研究としては、日本臨床研究グループ(JCOG)などに参加してエビデンスの構築に貢献しています。当分野の理念である「医局員ひとり一人が、仕事を通じして誇りと幸せを感じられること、そして、医学の進歩に貢献し、患者満足度の高い医療を提供すること」を実践して、日本でトップレベルの乳癌診療・研究を担う人材の育成と医療の提供をしていきたいと考えています。
チームメンバーによるダヴィンチ・ロボット手術
チームメンバーによるダヴィンチ・ロボット手術