学部・研究科・附属病院の歴史

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医学部・医学研究科

研究室紹介

生体機能・構造医学専攻
生体情報・機能制御医学専攻
生体防御・総合医学専攻
予防・社会医学専攻

予防・社会医学専攻

医学教育・社会医学講座

環境労働衛生学分野

 環境労働衛生学分野(旧衛生学講座)は1949(昭和24)年、本学部の前身である名古屋女子医科大学の1講座として設立され、翌年、名古屋市立大学医学部の講座になった。入鹿山且郎教授と、本学の前身である名古屋市立女子医学専門学校第1期生である青山光子助手との体制で、教育研究活動をスタートした。その後、六鹿鶴雄教授、青山光子教授、井谷徹教授の時代を経て、2009年より上島通浩が分野(教室)を主宰している。教室員は、榎原毅准教授、伊藤由起准教授、佐藤博貴助教の4人の分野教員と、本学が環境省から受託しているプロジェクト「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」専任の加藤沙耶香、松木太郞、玉田葉月の3人の特任助教、博士研究員、研究員、博士・修士課程の大学院生、技術職員より構成されている。
 衛生学は、医師法第一条に医師の使命として規定される公衆衛生を構成する一学問領域であり、当分野では環境と労働に関する内容を主に扱ってきた。環境衛生学領域では、1950年代後半からの名古屋市などの大気汚染状況に関する公害研究への取り組み、1970年代の廃棄物処理行政への貢献、住居、地下街などの環境に関する生活衛生、衣服衛生に関する研究などで高い評価を受けてきた。労働衛生学領域では、じん肺などの調査研究、筋骨格系への労働負担、職業性ストレス、産業疲労、作業環境などの研究、中小企業を対象とした職場改善プログラムの実践などで指導的役割を担ってきた。これらは70年の歴史の中で特筆すべき足跡であり、現教室員はこうした歴史をふまえ、化学物質のリスク評価、人間工学研究の拠点として社会から認知される教育研究活動を日々進めている。

公衆衛生学分野

 公衆衛生学講座は1960年に設立され、初代教授には奥谷博俊先生が就任されました。1983年の2代目教授の大野良之先生のご就任より、講座の専門を「疫学」に移し、1992年の3代目教授、徳留信寛先生のご就任、2010年の4代目教授、鈴木貞夫の就任と続き、現在に至ります。2002年の大学院大学化の際に、一旦「健康増進・予防医学」分野と改名しましたが、その後「公衆衛生学」分野という懐かしい名前に戻しました。社会医学を専攻するものにとって「公衆衛生」という響きは特別な思い入れがあるのだと思います。その広い公衆衛生の名の下で、一貫して疫学を中心とした研究、教育、社会貢献に取り組んでおります。
 疫学研究のひとつの花形である「コホート研究」は、規模も大きく、時間もかかるので、大野、徳留先生とともに取り組んだJACC研究は、日本初の大規模コホートであり、多くの成果を残して、現在はデータベース化されています。その後継研究であるJ-MICC研究は、2005年に研究参加者募集を開始し、遺伝子も対象とした分子疫学に新たなページを開く研究として現在進行中です。「横断研究」による関連研究から、「追跡調査」による因果推論へと研究は進行しています。当分野は岡崎研究として参加しており、多くの学位論文がここから生まれてます。分野独自のコホートとして、「心理、社会的要因に焦点をあてたゲノムコホート研究(GCOPスタデイ)」にも取り組んでいます。
 疫学を通して、今後とも社会に貢献していきたいと念じております。皆様のご支援、ご協力を今後ともよろしくお願い申し上げます。

(文責:鈴木 貞夫(教授))

法医学分野

沿革

 1956年神戸大学より何川 涼が講師として着任し、法医学の講義を行った。1961年に九州大学助教授原三郎が法医学講座初代教授として着任し、1963年に久留米大学教授に転出した。同年大阪大学助教授高部福太郎が第2代教授に着任し、1992年定年退官した。翌1993年佐賀大学教授的場梁次が第3代教授として着任し、1998年大阪大学教授に転出した。翌1999年東京大学助教授長尾正崇が第4代教授として着任した。2000年には医学研究科の改組に伴い、大学院医学研究科予防・社会医学専攻医学教育・社会医学講座法医学分野となる。長尾は2008年広島大学教授に転出した。翌2009年岩手医科大学教授青木康博が第5代教授として着任し、現在に至る。


研究

 高部のもと、損傷の生活反応およびHPLCによる血痕検査法についての研究、また山田高路による法中毒学的研究、大矢正算による法医血清学・法医遺伝学的研究、岩佐峰雄による損傷の生活反応およびDNA多型に関する研究、前野善孝による単離培養心筋細胞を用いた化学物質、特に乱用薬物による心臓機能への影響に関する研究、井上博之による血痕の種属鑑別、および生体試料からの薬毒物検出に関する研究等が行われた。的場のもとでは心臓性突然死の病理、および覚せい剤乱用者の心臓病理に関する研究、小山宏義によるDNA多型の検出法および集団調査に関する研究等がなされた。さらに長尾による有機リン系神経剤および児童虐待に関する研究、磯部一郎による有機リン系薬物による培養アストロサイトに対する細胞傷害、シグナル伝達への影響に関する研究等が行われている。現在のスタッフは教員が青木の他、准教授加藤秀章、講師菅野さな枝、助教福田真未子の計4名、技術職員が中村昌美、大瀧純の2名である。青木によるCT三次元再構成像を用いた法医人類学的研究、加藤による肝炎ウイルスの疫学および病理に関する研究、菅野による細胞を用いた薬毒物の毒性発現機序の研究、福田によるX染色体の集団調査および血縁鑑定への応用に関する研究等が遂行されている。


実務

 法医解剖数は近年は年間100体を超え,過去5年間672体実施した。その他,書類鑑定等を少数行っている。

医学・医療情報管理学分野

 名古屋市立大学の医学情報学の礎は、旧第一内科学講座ご出身の宮治 眞先生と、旧第一生理学講座の長谷川泰洋先生によって創られた。宮治先生は医学・医療情報管理学助教授 兼 経営・情報企画部副部長として、2004年、全国に先駆けて大学病院に実装された電子カルテの開発に携われ、山田和雄元病院長らとその導入に尽力された。医学部医学情報学講義・実習を統括され、医療安全、病院経営など幅広い知識と人脈でご活躍された。長谷川先生は1991年、全学でいち早く医学部内にLANを敷設され、1995年医学部情報管理・教育センター(病院・看護学部を含む、以下センター)発足とともに初代主任・助教授として、ご自身で構築されたUnixシステムでLAN管理に当たられた。
  また、佐藤泰正・現NTT西日本東海病院長らと、知識ベースによるAI研究等を進められた。2005年、長谷川先生が鈴鹿医療科学大学に栄転され、公募選考で片野がセンター担当と医学部・大学院医学情報学講義を兼務することとなった。センターは創設以来25年となるが、全学3分の2を占める2500ユーザと6000台の接続機器を擁しながら、他大学で頻見されるサーバ侵入や情報漏洩などのセキュリティ事故は皆無である。今後センターは、長年の懸案である病院との情報管理統合や、全学一括管理を視野に入れている。
  現在教員は一名のみであるが、コンピュータ科学の脳神経外科臨床への応用研究として、とくに頚動脈狭窄症についてMDCTA Ca score 解析の活用、CASの3D-computer simulation、NGS/microarrayによる遺伝子情報処理などを精力的に行い公表している。

(文責:片野 広之(准教授))


チームメンバーによるダヴィンチ・ロボット手術

医学・医療教育学分野

 医学・医療教育学分野は、卒前教育、卒後臨床研修、総合診療を担当する分野として2007年に新設され、モデル・コアカリキュラムと共用試験の導入や診療参加型臨床実習などの教育改革、新臨床研修プログラムと総合診療研修ユニットの立ち上げなどを担当しました。その後、総合研修センターと地域医療教育学分野の新設により、臨床研修と総合診療機能が各部門に移行し、現在は卒前教育を担当しています。
 過去十数年の医学教育を振り返るとその基本的な流れは3つに集約されます。それは(1)各講座の裁量に基づく講座裁量制から国際的な質保証のための国際標準化へ、(2) 何を学んだかを単位で示す履修主義から卒業時に何が出来るかという教育アウトカムを基盤とする学習成果基盤型へ、(3) 病院実習のみによる病院基盤型から学外施設や地域の医療現場の実習を含む地域基盤型へという流れです。
  現在、この潮流は概念から実践に移行し、さらに質的向上に向かっていると思います。本学もこの流れに対応して、昨年(2019)は国際標準化のための医学教育認証評価制度に基づく点検作業を行いました。また当医学部は学習成果基盤型教育のためのアウトカムを全国でもいち早く導入しましたが、その確実な達成のために学修段階毎のマイルストーンの導入が進んでいます。
  さらに地域基盤型教育として医療系学部連携による地域の課題解決型学習や在宅医療を含むプライマリケア実習が定着しつつありますが、今年はCOVID-19への対応という新しい課題も生じています。医学教育はその特性として時代を先読みした持続的な改革が求められます。今後も社会のニーズを鋭敏に捉え、かつ本質を見失わない医学教育改革に取り組んでいきたいと思います。

(文責:早野 順一郎)

次世代医療開発学分野

 次世代医療開発学分野は、名市大病院内に設置された臨床研究開発支援センターと協同して、学内で行われる臨床研究・治験のマネジメントを主な業務としています。消化器内科医1名、循環器内科医1名、生物統計家2名の専任教員4名が、センターの臨床研究コーディネーター(CRC)、事務職員とともに、各種臨床研究が安全、適正かつ効率的に実施できるよう管理・支援を行っています。研究活動としてはまずレギュラトリーサイエンスがあげられます。レジュラトリーサイエンスとは、科学技術の成果を的確に予測、評価して人と社会に役立てる科学のことで、医療分野では医薬品、医療機器、食品等が対象になります。
  また消化器内科領域では胃食道逆流症、過敏性腸症候群など機能性消化管疾患をターゲットにその病態、新規治療法の開発を目指した臨床研究を、循環器内科領域では心不全を中心としたメタアナリシス研究を行い、あわせて消化器、循環器領域の大規模データベース研究にも取り組んでいます。教育面では医学部学生、医学研究科、薬学研究科大学院生に薬事行政、レギュラトリーサイエンスの講義を担当し、また医師・コメディカルはじめ大学教職員を対象とした臨床研究実施セミナー、生物統計セミナー等を通して、臨床研究の啓発に努めています。
  今後は治療評価学、臨床薬理学的研究にも着手し、分野の基盤構築をすすめ、さらに質の高い臨床研究の推進、新規医薬品・医療機器や医療技術の研究開発に取り組むという大学の使命を果たしたうえで、「臨床研究の強化による新しい医療の創出」という名市大の未来プラン実現、医療の発展と高度な医療提供に貢献したいと考えています。 

(文責:神谷 武(教授))

医療安全管理学分野

医療安全管理学分野集合写真

 名古屋市立大学病院に医療安全管理室が設置されたのは、平成15年4月1日です。当初は、主幹1名から始まり、平成29年4月1日より、医学部医療安全管理学分野として、正式に独立した分野となりました。そのきっかけは、他大学で相次いだ大きな医療事故です。平成28年6月施行の医療法施行規則の改正により、我が国の大学病院には、医療安全管理責任者の配置、医療安全管理室への専従医師の配置など、より厳しい医療安全管理体制が求められました。現在では、室長1名、副室長4名、主幹1名、主査2名(専従薬剤師、事務)、専従看護師1名、事務2名の体制となっています。昨年からは、医学部生の臨床実習も始まりました。さらに、昨年度は、東海医療安全研究会の主幹校も務めました。今後は、医療事故の再発防止、安全教育だけでなく、安全文化の熟成を目指したシステム構築などの研究活動にも力を入れていきたいと考えています。

(文責:戸澤 啓一)

医療安全管理学分野集合写真

臨床感染制御学分野

 臨床感染制御学分野は、自施設のみならず地域や全国規模、さらに諸外国まで視野に入れ医療関連感染の予防・管理、地域連携と国際貢献、教育・啓発、人材育成など多方面から感染症の低減を追求する分野です。
 多職種で構成される大学病院の感染制御室を率いて、耐性菌対策や抗菌薬の適正使用、アウトブレイクやパンデミックへの対応などに取り組んでいます。感染症の制御には他の医療施設や行政などと地域ぐるみで協働する必要があり、さまざまな連携を通して情報の共有、均てん化を目指すとともに、他施設への支援や教育などの指導的な役割が求められます。さらに医療事情や衛生環境が十分でなく感染症による死亡が深刻な国々への支援や教育にも取り組む必要があります。これまでに私たちもさまざまなアジア諸国の医療施設に赴き、その国や地域の諸事情を勘案しつつ、感染対策の教育や支援をする活動を行ってきました。
 感染症から人類を守るためには、感染症を知り、感染症に対する対策を理解し、実行することが大切です。しかし当大学には臨床系の感染症学分野がなく、学生のみならず様々な職種の医療従事者が感染症について学ぶ機会に恵まれていません。医学部生に対する代替策として10年程前から感染制御室の選択BSLを感染症診療を学習する機会として設け、一緒に薬学部生も教育してきました。2019年からは感染制御室の実習が医学生全員の必須科目となり、学生が感染対策、感染症診療の実際に触れる場にしています。
 また感染症、感染対策のセミナーを定期的に開催し、学生、医師、病院スタッフや近隣の医療施設から参加される方々に加え、10か所の関連施設をサテライト会場としてネットで繋いで一緒に学習、意見交換を行っています。感染症診療のボトムアップを目指す地域連携の場として、感染症に関心を持つ後進の育成を目指して、さらに発展させていきたいと思っています。

(文責:中村 敦(教授))