学部・研究科・附属病院の歴史
学部・研究科・附属病院の歴史
消化管G
消化管癌の血液中、尿中バイオマーカー探索、消化管癌に対する光線療法の開発、炎症性腸疾患の新規治療開発、 JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)消化器内視鏡グループ承認施設
胆膵G
極細径胆道・膵管鏡を用いた診断・治療、LAMS(Lumen apposing metal stent)治療、IgG4関連硬化性胆管炎、PSC、自己免疫性膵炎、慢性膵炎、膵石のガイドライン作成、腫瘍増殖の新規分子制御研究、膵癌SNP解析、FISH法でのIPMN癌化解析
肝臓G
肝炎ウイルス遺伝子に関するバイオインフォマティクス研究、ヒトゲノムを用いた遺伝子研究、非代償性C型肝硬変に対する治療効果・予後に関する研究、肝細胞癌に関する基礎および臨床研究
内分泌糖尿病G
肥満症・肥満合併糖尿病の病因としての視床下部炎症の研究、サルコペニア合併糖尿病の発症機序と新規治療法の開発、食品やたばこ等への嗜好異常としての肥満病態の解明、IoT技術による血糖管理最適化法の研究
当分野は、喘息、慢性咳嗽、COPD、肺癌、呼吸器感染症、間質性肺疾患などの診療を行う呼吸器・アレルギー内科と、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、血管炎症候群などを診療するリウマチ・膠原病内科からなる内科学教室です。
呼吸器・アレルギー内科では診療領域別の4グループで研究に取り組んでいます。喘息・アレルギーグループでは、喘息と慢性咳嗽の病態解析と新たな治療法追求を目指した研究に力を入れています。難治性喘息における咳受容体感受性・末梢気道病変の重要性、咳喘息の病態・治療、アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎合併喘息の病態、胃食道逆流症に伴う慢性咳嗽の病態解析、COPDの増悪機序などの臨床研究や、ヒト線維芽細胞やマウスモデルを用いた基礎研究を他分野との共同研究も含めて進めています。肺癌グループでは抗癌剤耐性機序の基礎研究、治療標的分子の解明、抗癌剤感受性・副作用関連の遺伝子多型や緩和医療に関する臨床研究を行なっています。感染症グループでは非結核性抗酸菌症の病因・細菌学的研究、間質性肺疾患グループでは特発性間質性肺炎のCT画像と予後診断や動物モデルでの抗線維化薬の作用機序が主なテーマです。臨床試験では新規咳嗽治療薬の国際共同試験、肺癌化学療法の多施設研究に参画しています。リウマチ・膠原病内科では、関節リウマチの生物学的製剤治療効果予測因子、膠原病のT細胞表面マーカー、免疫抑制剤使用患者に合併する感染症(結核/非結核性抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎)の診断・治療に関する臨床研究、自己免疫疾患モデルマウスを用いた免疫寛容誘導に関する基礎的研究に取り組んでいます。
(文責:新美 彰男(教授))
循環器内科学は、1978年第一内科から循環器部門が部分的に独立する形で、教室の前身である第三内科が設立され、初代藤浪隆夫教授が着任されました。藤浪隆夫先生は当時より心腎連関の重要性を鑑みて、当時名市大病院になかった腎臓部門を教室のもう一本の柱として設立されるとともに、ナンバー内科としての必要性から糖尿病代謝内分泌部門、少人数ではありましたが消化器部門を併設されました。
その後第2代木村玄次郎教授が国立循環器病センターから着任されましたが、医学部の大学院化や内科における診療科再編により、旧第三内科は、循環器内科・腎臓内科を診療科として標榜する心臓・腎高血圧内科学分野として新たな歩みを始めました。藤浪隆夫先生は脂質代謝・動脈硬化を中心とした循環器病学、木村玄次郎先生は高血圧臨床に軸足を置いた腎臓病学を専門として教室の発展に努めてこられました。両先生の築かれた実績が教室の礎になっています。2013年11月1日より大手信之が分野主任を引き継ぎ循環器・腎臓の先端医療の導入に軸足を置いた教室運営を行ってきました。
2019年7月より腎臓分野の専門性を高めるために心臓・腎高血圧内科学から腎臓内科学を新たに分野化し、大阪大学から新進気鋭の濱野高行教授にご着任いただきました。循環器分野は気持ちも新たに循環器内学としての歩みを始めています。循環器内科学では、経カテーテル的大動脈弁置換術、不整脈アブレーション、埋め込み型補助人工心臓の管理などの循環器先端医療に取り組みつつ、研究面では心臓病の高度な超音波診断法の確立、心機能の非観血的評価、心不全の病態解明、高血圧・動脈硬化の疫学などを幅広く研究し、成果は国内外で高く評価いただいております。
(文責:大手 信之)
チームメンバーによるダヴィンチ・ロボット手術
腎臓内科学は、旧第三内科を源流とする心臓・腎高血圧内科学から令和元年に独立した、新しい教室です。従来、名市大では血液透析が主体でしたが、腹膜透析導入も開始し、血液透析と腹膜透析のハイブリッド療法も開始しました。また土曜の血液浄化も施行しており、火木土透析にも対応できるような体制にしております。
「教育も研究もすべて臨床から」を合い言葉に、臨床に主座を置く教室です。慢性腎臓病を診るにあたっては、ややもすると、腎臓のケアだけになりがちですが、透析患者の死因が腎不全ではなく心血管イベントであることからもわかるように、腎不全の合併症をもすべて診る全人型医療に努めております。具体的には、慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常(CKD-MBD)や腎性貧血を中心に、腎臓と他臓器との連関を意識しながら合併症を診ております。CKD-MBDは、骨は粗鬆化する一方で、血管は骨化するという概念であり、いわばカルシウムとリンの分布異常の病態です。この分布異常是正の観点から、腎不全患者の骨粗鬆症と血管石灰化を同時に治療していくことを念頭においています。
研究に関しては、新薬が目白押しのCKD-MBDと腎性貧血に加え、急性腎障害と糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)を中心にしています。また、大学内の研究だけにとどまらず、積極的に製薬会社や他施設との共同研究をおこなっています。
教育に関しては、腎炎、ネフローゼ、慢性腎不全、電解質異常、腎代替療法のすべてに精通できるように学生、研修医、専攻医を指導しています。ここにおいても、腎不全合併症の評価と治療が的確にできる医師に育てようと考えています。
(文責:濱野 高行(教授))
神経内科学講座は、1970年代に旧第二内科学講座内に立ち上がった神経筋疾患を専門とする診療グループを起源とし、2001年講座として独立した約20年の歴史を有する臨床講座です。現在大学および関連病院に、約60名の教室員が集う研究室になっています。
臨床は広く神経疾患に対応することを旨とし、パーキンソン病・パーキンソン病関連疾患を始めとする神経変性疾患、アルツハイマー病を始めとする認知症疾患、重症筋無力症・多発性硬化症を始めとする免疫性疾患等に幅広く対応しています。
特に、脳血管障害においては、脳神経外科に協力いただきながら、神経内科医を基盤とする血管内医療チームにてtPAから血管内治療まで対応しています。また、パーキンソン病および関連疾患に対しては、リハビリテーション医学・脳神経外科・消化器内科と共同の基に、脳深部刺激療法やLドパ持続経腸療法も積極的に導入し、更に新規リハビリテーション法の介入法も考案しながら進行期パーキンソン病患者さんの生活の質(quality of life: QOL)の維持に努めています。認知症においては、アルツハイマー病の早期診断を可能にする新規画像評価法の開発(北海道大学放射線科共同研究)や新規バイオマーカーの発掘(筑波大学人間総合科学研究科共同研究)の臨床研究を行っています。また、本研究室にて発見した(小鹿幸生前教授による)神経ペプチド(海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド hippocampal cholinergic neurostimulating peptide: HCNP)とその前駆体蛋白の記憶機構における生理的機能および認知症における意義について研究を継続しています。現在、非常に興味深い事実が明らかになっており、新たな仮説が発表できるよう検証実験を重ねているところです。いくつかの点で創薬標的になりえるものと期待し、更に研究を継続したいと考えています。
今後、この分野の社会的ニーズは更に拡大してきます。若き研究員の更なる参加を期待するとともに、広く皆様からのご支援・ご指導を頂きますように、宜しくお願い致します。
血液・腫瘍内科学分野は、「患者さんから学び、患者さんに還元する医療の実践」を合い言葉に、がんのトランスレーショナル・リサーチ(TR)と臨床研究に積極的に取り組み、国内外からも留学生を受け入れています。主に悪性リンパ腫、多発性骨髄腫や成人T細胞性白血病/リンパ腫などの成熟リンパ系腫瘍の病態やバイオマーカー研究、そして新たな治療開発に取り組んでいます。
TRとしては、ゲノム異常と臨床病態との関連、がん微小環境における免疫病態の解析や分子標的薬の耐性化克服に焦点を当てています。臨床研究としては、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)・リンパ腫グループの主要施設として、多発性骨髄腫や悪性リンパ腫の3試験において研究事務局や代表を務め我が国における標準治療確立に貢献し、研究を介して収集した検体を用いた全国規模での附随研究も実施しています。
附属病院においては、臍帯血移植やハプロ移植を含む同種造血幹細胞移植の実施に加えて、新規分子標的療法やキメラ抗原受容体導入T細胞(CART)療法・Bispecific T-cell engager(BiTE)などの新時代の免疫療法、特に国際・国内第I相試験に参加し、画期的な効果が認められた患者さんも多数おみえです。
さらに、日本血液学会主導で実施している多発性骨髄腫患者レジストリーの研究代表施設としての役割も担っています。また臨床腫瘍部は、「がん難民をつくらない」をモットーに原発不明がんや肉腫患者さんの診断と治療を担当しつつ、がん患者さんの合併症対策やQOL改善を目指した支持療法や患者支援に関する研究を薬剤部・看護部や緩和ケア部と共同で実施しています。
(文責:飯田 真介(教授))
初代教授青地修(故人)が、日本でも比較的早い時期に麻酔科(1966年)・ペインクリニック(1967年)・集中治療部(1969年)を設立し、続いて二代目教授勝屋弘忠が救急部の設置(1993年)に尽力し、現在は祖父江和哉が主任教授を務めています。
2017年4月には、ペインクリニックを集学的痛みセンター(当院の呼称は「いたみセンター」)へ改組し、センター長の杉浦健之(教授)を中心として、多職種で慢性痛へアプローチする体制が整いました。
また、2018年12月には、田中基(教授)をセンター長として「無痛分娩センター」を設立しました。無痛分娩の件数は急増しており、地域のニーズに答えることができています。同時に産科麻酔についても、大きく改善がなされ、より安全性が高まりました。
さらには、2019年4月には、祖父江をセンター長として「周術期ケアセンター」が立ち上がり、多職種が参加してより安全で質の高い周術期ケアを提供する仕組みが出来上がりました。
当分野は設立当初より、しっかりとした麻酔(手技、理論)を身に付けた上で、集中治療・救急・ペインクリニックなどの得意分野を持つ多様な人材を育成してまいりました。その結果、多くの麻酔科専門医、心臓血管麻酔専門医、集中治療専門医、救急科専門医、ペインクリニック専門医などを輩出しており、彼らは中部地区を中心に全国で活躍しています。
今後も、教育や働き方の「多様性」を大事にし、学生と医療従事者への教育を通して、「多様な人材」の育成に尽力していきます。
(文責:祖父江 和哉)
当教室の医局員は、現教授・芝本の2002年の着任時には62名でしたが、現在は180名になりました。2002年時には常勤医を派遣している関連施設は21でしたが、2020年現在では45に上ります。北海道と沖縄に関連病院があるのは大きな特徴です。このような医局の発展を支えてきたのは若手の入局でした。2020年度当科の専攻医プログラムへの応募は12名で、放射線科としては日本一でしたが、その他の年でも日本一の入局者数は4回経験しております。すぐ上の若手医師が大勢いることが、入局しやすい状況を作っているようです。
当教室では放射線医学の各分野における臨床および基礎研究を行ってきました。臨床では、中央放射線部に最新で最高の装置を備えるよう努力してきました。その結果、アジア初または本邦初で、2管球CT Somatom Definition、高精度放射線治療装置トモセラピーHi-Art、トモセラピーHDA、トモセラピーRadixact、最新鋭治療計画装置RayStation、治療計画用MR装置Ingenia MR-RT simを当院または関連病院に導入し、研究にも活用してきました。
基礎研究では、放射線治療の基礎、放射線治療効果修飾剤や低線量放射線被曝の影響について、大学院生が中心になってマウスや培養細胞を用いて行ってきました。動物飼育器やX線照射装置を独自に研究室で保有しています。放射線治療の最高の学会である米国放射線腫瘍学会での発表演題数は、2011年から2019年まで9年連続日本一となりました。英文論文数も年間30を超えるようになりましたが、今後はさらに研究の質を高めることを目指しています。
地域医療学分野は、「より良い地域医療とは何か?」を追求し、大都市から周辺地域・へき地に至るまで、格差のない安心できる医療が提供できるよう、連携を深めた新たな地域医療を開拓することを理念としています。
2018年4月1日には、名古屋市立大学病院、行政、地域の医療介護福祉関係者と協働し、地域の方々と直接つながりを形成して介護予防やフレイル対策の研究開発、さらにより良い地域包括ケアシステムの普及・推進に取り組むため、当分野を中心に、地域包括ケア推進・研究センターが大学病院組織として設置されました。
センターに与えられた使命としては、名古屋市健康福祉局から委託された「介護予防・認知症予防評価推進事業」があります。具体的には名古屋市独自のミニデイ型通所サービス・運動型通所サービスの効果検証により、その科学的エビデンスの構築と改善提言が期待されています。
また独自研究として、「センサー内臓アンクルウェイトの開発とフレイル予防への効果の検証」を産学共同で積極的に進めております。この研究は、平成30・31年度・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の介護予防(軽度認知症・フレイル等)につながるIoT活用による行動変容促進サービスの創出に関する研究に採択され、一定の評価を得ることができました。また、科学研究費の獲得によりその科学的有用性の立証を推進し、広く社会還元できる形での実用化に向けて加速していく予定です。
他には市民公開講座の開催による啓蒙・啓発、多職種連携研修会の企画運営、医師会、歯科医師会、薬剤師会等との連携を積極的に推進し、名古屋市民・地域に根差した活動にも取り組んでいます。
激変する昨今の状況から、地域包括ケアのあり方もさらなる見直し、変革に迫られることになるでしょう。開学100周年、200周年を見据えて名市大・市大病院が市民や地域の皆様に高度かつ適切な医療を提供できるためには、やはり地域の方々への健康アドヒアランスの向上のための働きかけや公衆衛生的啓発も重要になってくると思います。院内では地域医療連携センターと協力し、下支え的な立ち回りに徹しつつ、対外的には元気なうちからの疾病・介護予防の研究・啓発を地道に行っていければと考えています。
(文責:赤津 裕康(教授))
当研究室は医学部(大学院医学研究科)臨床薬剤学分野と薬学部(大学院 薬学研究科)病院薬剤学分野、および大学病院薬剤部で構成され、医学部・薬学部・病院薬剤部の3部門が有機的に連携し、教育・研究を進めています。
当研究室の教育方針は“トランスレーショナルリサーチの実践”を目標に、臨床現場への貢献を意識した研究課題に、大学院生をはじめ学部学生が取り組んでいます。研究成果は国際学会、論文などに積極的に報告しており、世界でも高い評価を得ております。
1.排尿障害のメカニズム解明および新規薬物治療法の探索
下部尿路障害 (LUTS) は、患者のQOLを著しく低下させる疾患であり、様々な病気に合併して生じます。当研究室では、高血圧モデル、糖尿病モデル、膀胱虚血モデルなど、様々な疾患モデル動物を作製し、LUTSの病態解明および新規薬物治療法の開発を目指しています。
2.男性性機能障害に関する基礎的および臨床的研究
勃起不全(ED)は事故や加齢、種々の疾患により十分な勃起を得られない疾患であり、QOLを著しく低下させることが知られています。当研究室では、陰茎に分岐する内腸骨動脈の結紮した動脈性EDモデルや、肥満によるEDモデルなど、様々な疾患モデルラットを用いてEDの発症メカニズムの解明、およびその治療法の探索を試みています。
3.薬の有害事象や適正使用に関する臨床研究
薬は疾病の治療に大きく貢献する一方で、副作用を生じる場合があります。副作用の中には薬の開発段階で明らかになっているものだけではなく、広く使用するようになって初めてわかる副作用もあります。当研究室では薬剤の適正使用の状況や有害事象発現を調査し、その対処法の探索を試みています。
先進急性期医療学は救急・災害医療に関わる研究・教育を推進する分野として2015年に設立されました。3人の診療担当教授で構成される他に例のない人員体制ですが、それぞれに異なるバックグラウンドを活かし、学生の教育や研究活動を行っています。
私は救急医学の中でも外傷、熱傷、中毒といった外因性疾患と敗血症、感染制御を専門とします。日本救急医学会をはじめ、各学会を通した多施設共同研究や診療ガイドラインの作成を通してこれらの分野の発展に努めています。学内では、医学系サークルMeLSCの顧問を務め、蝶ヶ岳ボランティア診療班にも参加しています。2016年からは救命救急センターの学生アルバイト「ドクターエイド」を設立して、学部学年を問わず多くの学生に救急医学・医療に触れる機会を作ってきました。
70周年を迎える名市大は高度先進医療を行う大学病院として、急性期の医療、特に救急・災害医療に力を入れることを表明しています。名市大にとっては新しい分野ではありますが、学生や市民からの期待に応え、大学の発展に貢献できるように努めて参りたいと思っています。
(文責:松嶋 麻子)